はじめに:AIアプリ開発の民主化をリードする「Dify」とは2025年、生成AIのビジネス活用はもはや当たり前の時代となりました。多くの企業が業務効率化や新たな価値創出を目指し、AI導入を模索しています。しかし、その一方で「何から始めればいいかわからない」「専門的な開発スキルを持つ人材がいない」といった課題から、具体的な一歩を踏み出せずにいるケースも少なくありません。特に、自社の業務に特化したAIアプリケーションを開発するには、これまで高度なプログラミング知識やLLM(大規模言語モデル)に関する深い理解が不可欠でした。そんな中、AIアプリ開発のハードルを劇的に下げ、アイデアを迅速に形にすることを可能にするプラットフォームとして大きな注目を集めているのが「Dify」です。Difyは、ノーコード/ローコードで直感的にAIアプリケーションを構築できるLLMOpsプラットフォームです。本記事では、このDifyが提供する代表的な5つのアプリケーションタイプ(チャットボット、エージェント、テキスト生成、チャットフロー、ワークフロー)について、企業のAI導入を支援する代表の岡田と、現場で開発を手掛けるエンジニアの秋月の対話形式で、その機能と可能性を徹底的に解説します。この記事を読めば、Difyの基本的な使い方から応用的な活用法までを理解し、自社の課題解決にどう役立てられるかの具体的なイメージが掴めるはずです。 Difyの心臓部!5つの代表的なアプリケーションタイプを徹底解説岡田:秋月さん、今日はクライアントからの問い合わせも増えている「Dify」について、その中心的な機能であるアプリケーションタイプについて深掘りしていきたいと思っています。早速ですが、Difyにはどのような種類のアプリがあるのか、全体像から教えてもらえますか?秋月:はい。現在のDifyでは、主に5つのアプリケーションタイプが提供されています。それぞれに特徴があり、作りたいAIの用途によって使い分けることになります。具体的には、「チャットボット」「エージェント」「テキスト生成」「チャットフロー」「ワークフロー」の5つです。岡田:なるほど、5つもあるんですね。それぞれがどう違うのか、一つずつ詳しく聞いていきましょうか。まずは一番イメージしやすい「チャットボット」からお願いします。① チャットボット (Chatbot):基本となる対話型AI秋月:はい。チャットボットは、ユーザーとAIが連続した対話を行う、最も基本的なアプリケーションです。ChatGPTのように、人間とAIが交互にメッセージをやり取りするインターフェースを簡単に作ることができます。岡田:まさにAIチャットの王道ですね。設定はどのくらい自由にできるんですか?秋月:かなり柔軟です。まず、頭脳となるLLMモデルを自由に選べます。OpenAIのGPTシリーズはもちろん、GoogleのGemini、AnthropicのClaudeなど、様々な最新モデルに対応しています。さらに、AIのキャラクターや役割を定義する「プロンプト」を事前に設定したり、会話の前提となる情報(コンテキスト)を埋め込んだりすることもできます。岡田:「あなたは優秀なカスタマーサポート担当です」といった役割を与えるわけですね。これだけで、汎用的なAIが特定の業務に特化したAIに変わる。非常にシンプルで強力な機能ですね。② エージェント (Agent):自律的にタスクを遂行する賢いAI岡田:次に「エージェント」ですが、これはチャットボットとどう違うのでしょうか?「代理人」という名前からすると、何かを代行してくれるイメージですが。秋月:その通りです。エージェントの最大の特徴は、与えられたタスクを達成するために、AIが自律的に思考し、必要なツールを使いこなす点にあります。単に応答を返すだけでなく、「何をすべきか」を自分で考え、複数ステップの処理を実行するんです。岡田:というと、例えば「今日の東京の天気と、それに基づいた服装を提案して」とお願いしたら、まず天気情報を検索して、その結果を解釈して、最適な服装を考えてくれる、といった一連の流れを自動でやってくれるイメージですか?秋月:まさしくその通りです。Difyのエージェントは、内部に「シンキングモード」を持っていて、タスク解決までの計画を立てます。そして、Web検索ツール、計算ツール、あるいは社内データベースに接続するAPIなど、あらかじめ設定された「ツール」を自動で呼び出して情報を収集・処理し、最終的な答えを導き出します。③ テキスト生成 (Text Generation):特定のタスクに特化した文章生成秋月:次は「テキスト生成」です。これは、与えられた文章の「続き」を予測して生成する、非常にシンプルな形式です。チャットのような対話形式ではなく、1回の入力に対して1回の出力を返します。岡田:対話ではなく、単発の処理に特化しているということですね。どういった用途で使うのが効果的なんでしょう?秋月:例えば、「以下の文章を要約してください:【ここに長文】」や「この製品の特徴からキャッチコピーを3つ作って:【特徴リスト】」といった、定型的なタスクに向いています。プロンプトの中に{{変数}}のような形でプレースホルダーを埋め込んでおき、毎回変わる部分だけを入力する、といった使い方ができます。④ チャットフロー (Chatflow):高度な対話ロジックを視覚的に構築岡田:さて、ここからがDifyの真骨頂という感じがしますね。「チャットフロー」とは何でしょうか?「チャット」と「フロー」が組み合わさっていますが。秋月:はい。チャットフローは、先ほどのシンプルなチャットボットを、より高度で複雑なものに進化させるための機能です。Difyの「オーケストレーター」という編集画面で、「開始」「LLM」「ナレッジ検索」「条件分岐」といった様々な機能を持つ「ノード」を線でつなぎ合わせることで、対話の裏側で動く複雑な処理フローを視覚的にデザインできます。岡田:つまり、ユーザーとのチャットを起点にして、裏では社内マニュアルを検索したり、条件によってAIの応答を変えたりといった、複雑なロジックを組めるということですね。秋月:その通りです。「シンプルなチャットボット」がAIと1対1で話すだけなのに対し、「チャットフロー」はユーザーとの対話の中で、データベース検索や外部API連携といった複数のタスクを組み合わせた高度なやり取りを実現します。よりインテリジェントな対話型アシスタントを作るための機能です。⑤ ワークフロー (Workflow):バックグラウンドで動く自動処理フロー岡田:最後は「ワークフロー」ですね。これは「チャットフロー」とどう違うんですか?どちらもフローを組む機能のようですが。秋月:非常に良いポイントです。ワークフローもチャットフローと同じく「オーケストレーター」でノードを組み合わせて作成しますが、最大の違いは「ユーザーとの対話インターフェースを持たない」点です。岡田:というと、チャット画面がないということですか?では、どうやって動かすんでしょう?秋月:ワークフローは、主にAPI経由で呼び出されることを前提とした、バックグラウンドでの自動処理に使われます。例えば、「新しい顧客データが登録されたら、その情報を要約してSlackに通知する」といった、特定のイベントをきっかけに起動する一連の処理を構築します。人間が介在せず、システム間で完結するタスクの自動化が主な用途です。岡田:なるほど!「チャットフロー」は対人向けの高度な対話システムで、「ワークフロー」はシステム連携やバッチ処理といった対システム向けの自動化ツールという棲み分けですね。これは非常にクリアになりました。⑥ 機能比較表:最適なアプリケーションタイプの選び方秋月:はい。5つのタイプを目的別に整理すると、以下の表のようになります。アプリケーションタイプ主な目的・特徴ユーザーとの対話代表的なユースケースチャットボットシンプルな連続対話ありFAQボット、基本的な社内アシスタントエージェントツールを使い自律的にタスクを解決あり競合調査、旅行プラン提案、複雑な質問応答テキスト生成定型的な単発の文章生成なしメール文面作成、要約、キャッチコピー生成チャットフローノードを組み合わせた高度な対話ロジックあり高機能なナレッジ検索ボット、予約システムワークフローバックグラウンドでの自動処理なしデータ連携、定型レポートの自動生成、Slack通知Difyの可能性を広げる「ツール」と「プラグイン」岡田:先ほどエージェントの説明で「ツール」という言葉が出てきましたが、Difyでは外部の機能と連携することもできるんですよね?秋月:はい。Difyの大きな魅力の一つが、「ツール」と「プラグイン」による拡張性です。これらは特にエージェントやチャットフロー、ワークフローを構築する際に強力な武器となります。ツールは、Web検索や計算、GitHub連携といった外部の特定の機能を利用するためのものです。一方、プラグインは、Difyというプラットフォーム自体の機能を補完・強化するための拡張モジュールで、新たなLLMモデルを追加する際などに使います。まとめ:Difyを活用してAIドリブンなビジネスを実現しよう岡田:今日はDifyの主要な機能について、非常にクリアに理解できました。ありがとうございます。秋月:どういたしまして。岡田:今回見てきたように、Difyは単にAIと会話できるツールを提供するだけではありません。「チャットボット」「エージェント」「テキスト生成」「チャットフロー」「ワークフロー」といった5つの多彩なアプリケーションタイプを使い分けることで、アイデアレベルのAI活用から、基幹システムに組み込むような本格的な業務自動化まで、幅広いニーズに対応できることが分かりました。特に、プログラミングをせずとも、ノードを繋ぐだけで複雑な処理を実装できる「チャットフロー」や「ワークフロー」は、多くの企業にとってAI導入の強力な武器となるでしょう。これからAI活用を始める企業は、まず社内FAQ対応の「チャットボット」や、定型文作成の「テキスト生成」といったスモールな成功体験からスタートし、徐々に自社の業務プロセスに合わせた高度な「チャットフロー」や「ワークフロー」へとステップアップしていくのが、失敗の少ない進め方と言えるかもしれません。Difyは、その全てのフェーズをシームレスに支援してくれる、まさにAIアプリ開発の民主化を推進するプラットフォームです。その業務課題、AIで解決できるかもしれません「AIエージェントで定型業務を効率化したい」「社内に眠る膨大なデータをビジネスに活かしたい」このような課題をお持ちではありませんか?私たちは、お客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、本記事でご紹介したDifyのような最新のAI技術を活用して、ビジネスを加速させるための最適なご提案をいたします。AI戦略の策定から、具体的なシステム開発・導入、運用サポートまで、一気通貫でお任せください。「何から始めれば良いかわからない」という段階でも全く問題ありません。 まずは貴社の状況を、お気軽にお聞かせください。>> AI開発・コンサルティングの無料相談はこちらFAQ(よくある質問)Q1: Difyは無料で使えますか?A1: Difyには、クラウド上で利用できる無料プランと、より多くの機能を備えた有料プランがあります。また、オープンソースであるため、自社のサーバーにセルフホストして利用することも可能です。セルフホスト版では、機能制限なく全ての機能を利用できますが、サーバーの構築・運用コストは自己負担となります。Q2: Difyは日本語に対応していますか?A2: はい、Difyの管理画面やドキュメントは日本語に完全対応しています。また、扱うLLMモデルが日本語に対応していれば、開発するAIアプリケーションも当然日本語で利用できますので、日本のビジネス環境でも安心して活用いただけます。Q3: Difyで開発したアプリのセキュリティは安全ですか?A3: Difyはセキュリティを重視して設計されています。特に、自社サーバーに構築するセルフホスト版を利用すれば、全てのデータと処理を自社の管理下にある環境で完結させることができ、機密情報を外部に出すことなく安全にAIを活用できます。クラウド版を利用する場合でも、データの取り扱いについてはDifyのプライバシーポリシーをご確認ください。Q4: LangChainとの違いは何ですか?A4: LangChainは、AIアプリケーションを開発するためのPython/JavaScriptライブラリ(フレームワーク)です。開発者はコードを書いてアプリケーションを構築します。一方、Difyは、LangChainのようなライブラリの機能を内包しつつ、それらをグラフィカルなインターフェース(GUI)で直感的に操作できるようにしたプラットフォームです。プログラミングが不要なため、非エンジニアでも迅速にプロトタイピングや開発を行える点が大きな違いです。注釈Dify: オープンソースのLLMOpsプラットフォーム。ノーコード/ローコードでAIネイティブなアプリケーションを構築、運用、改善できる。LLMOps: 大規模言語モデル(LLM)を活用したアプリケーションを効率的に開発・運用・管理するための一連の手法や技術体系。