【実践ガイド】Difyで就業規則チャットボットを簡単作成!RAG活用術
最終更新日:
2025.6.19

監修者情報

秋月 宏介
リードエンジニア
福岡大学工学部電気工学科在学中よりアサヒビール等の大手HP制作とシステム開発プロジェクトに携わる。
卒業研究では、色覚異常を持つ人々を支援するためのAIに基づく画像変換技術を実施。
ポート株式会社に入社し、主に人材領域のプラットフォーム開発に携わる。その後、NOVEL株式会社では、マッチングシステムやSaaSの開発をリード。
直近ではAIによるライティング支援SaaS「SAKUBUN」を開発。現在、SAKUBUNのテックリード及び、LLM開発の責任者としてCLIPを用いた画像分類技術を研究中。
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「育児休業中の社会保険料について知りたい」「副業に関する規定はどこに書いてあっただろうか?」従業員からのこうした就業規則に関する問い合わせ対応に、人事・総務部門の多くの時間が割かれているのが現状です。一方で、従業員は必要な情報をすぐに見つけられず、双方にとって非効率な状況が生まれています。この課題を解決する鍵として、今、AIチャットボットが大きな注目を集めています。特に、社内文書など独自のデータに基づいて回答を生成するRAG(Retrieval-Augmented Generation)という技術がブレークスルーをもたらしました。本記事では、ノーコードAIアプリ開発プラットフォームである「Dify」を活用し、プログラミング知識がなくても、驚くほど簡単に高精度な「就業規則チャットボット」を構築する方法を、弊社のエンジニアによる解説形式で具体的にお届けします。
企業の成長とともに従業員数が増加すると、人事・総務部門への問い合わせは比例して増加します。特に就業規則は、法改正への対応や社内制度の変更で更新されることも多く、その内容は複雑化しがちです。
繰り返される同様の質問: 担当者は同じような質問に何度も回答する必要がある。
対応時間の属人化: 担当者によって回答のスピードや正確性にばらつきが出る可能性がある。
コア業務への圧迫: 問い合わせ対応に追われ、本来注力すべき戦略的な人事施策などに時間を割けない。
これらの課題は、担当者の負担を増大させるだけでなく、従業員満足度の低下にも繋がりかねません。
そこで強力な解決策となるのが、RAGを搭載したAIチャットボットです。従来のチャットボットが予め設定されたシナリオ通りにしか回答できなかったのに対し、RAGは全く新しいアプローチを取ります。
秋月:簡単に言うと、RAGは「検索」と「生成」を組み合わせた技術です。ユーザーから質問を受けると、まず就業規則のような指定された文書(ナレッジベース)の中から関連性の高い部分を高速で検索します。そして、見つけ出した情報をもとに、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)が自然で分かりやすい回答の文章を生成するんです。
岡田:つまり、ただマニュアルを提示するだけでなく、質問の意図を汲み取って「あなたの質問の答えは、就業規則の第〇条にこう書かれていますよ」と、人間のように解説してくれるわけですね。
この技術により、企業は自社の情報資産を活かした、賢く、信頼性の高いチャットボットを運用できるようになったのです。

引用:https://docs.dify.ai/ja-jp/learn-more/extended-reading/retrieval-augment/README
それでは、実際にDifyを使って就業規則チャットボットを作成するプロセスを見ていきましょう。今回は、弊社のエンジニア秋月がデモンストレーション形式で解説します。
秋月:今回は、誰でも手軽に試せるように、厚生労働省が公開しているモデル就業規則をベースにチャットボットを作っていきます。驚くほど簡単ですよ。
秋月:まず、チャットボットに読み込ませる就業規則のデータを用意します。今回は、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできるモデル就業規則のWordファイルを使います。PDFやテキストファイルでも問題ありません。
秋月:次にDifyにログインし、「ナレッジ」メニューから新しいナレッジベースを作成します。ここに先ほどのWordファイルをアップロードするだけです。
Difyが自動でドキュメントの内容を解析し、検索しやすいようにチャンク(小さな情報の塊)に分割してくれます。
岡田:このチャンク分割の方法や検索設定が、回答の精度を左右する重要なポイントになりそうですね。
秋月:その通りです。今回は、複雑な設定はせず、汎用的な方法でチャンク分割を行います。インデックス形式は「高品質」を選択し、検索設定はキーワード検索とベクトル検索を組み合わせた「ハイブリッド検索」を選びます。これで、幅広い質問に対応しやすくなります。
設定項目 | 選択内容 | 目的 |
|---|---|---|
チャンク処理 | 汎用モード | さまざまな形式のドキュメントに対応させるため |
インデックス形式 | 高品質 | 検索精度を向上させるため |
検索モード | ハイブリッド検索 | キーワードの一致と文脈の類似性の両方で検索するため |
Top-K | 5 | 回答生成の参考にするチャンクの数を5つに設定 |

秋月:ナレッジの準備ができたら、いよいよチャットボット本体を作成します。「スタジオ」メニューから新しいアプリを作成し、「チャットボット」を選択します。ここでの主役はプロンプトです。
プロンプトとは、AIにどう振る舞ってほしいかを指示する命令文のことです。この精度がチャットボットの性能を決定づけます。
岡田:なるほど。ただ「質問に答えて」と言うだけでは不十分なんですね。
秋月:はい。今回は以下のように役割(プロンプト)を設定しました。ポイントは2つです。
役割の明確化: 「あなたは就業規則の専門家です」とAIに役割を与える。
根拠の提示を指示: 「コンテキストとして与えられた就業規定を基に、該当する条文を抜粋しながら解説してください」と具体的に指示する。
この「条文を抜粋しながら」という一文が非常に重要です。これがないと、AIが一般的な知識で答えてしまったり、情報の出所が不明確になったりするのを防げます。

最後に、作成した「就業規則ナレッジ」をこのチャットボットのコンテキストとして紐付ければ、設定は完了です。
秋月:設定が完了すると、画面の右側にプレビュー画面が表示されます。ここで実際に質問を投げかけて、意図した通りに回答してくれるかテストします。例えば、「副業は可能ですか?」と入力してみます。
すると、チャットボットはナレッジベースから関連情報を探し出し、「第〇条に基づき、許可制となっています。詳細は…」といった形で、根拠となる条文と共に回答を生成してくれます。これで完成です。

秋月:Difyの面白いところは、これだけで終わらない点です。例えば、チャットボットに音声入力機能を追加することもできます。工場などで手が離せない従業員が、声で就業規則を確認する、といった使い方も考えられますね。
岡田:それは現場での活用シーンが広がりますね。さらに、特定の質問が来た場合に、Slackに通知を送ったり、人事担当者にエスカレーションしたりといったワークフローを組むことも可能ですか?
秋月:はい、可能です。Difyは外部サービスと連携するための機能(API連携)も備えているので、単なるQ&Aツールに留まらない、業務プロセスに組み込まれた高度なAIエージェントを構築することもできます。
今回は、ノーコードAIプラットフォーム「Dify」を使い、社内の就業規則に関する問い合わせに自動で応答するRAGチャットボットの作成方法を解説しました。
専門的なプログラミング知識がなくても、直感的な操作で、自社のデータに基づいた高精度なAIチャットボットをスピーディに構築できることがお分かりいただけたかと思います。
就業規則チャットボットは、あくまで一つの活用例に過ぎません。この技術は、社内マニュアル、製品仕様書、過去の問い合わせ履歴など、あらゆるドキュメントに応用可能です。社内に眠る膨大な情報資産を、誰もが活用できる「生きたナレッジ」へと変換する。RAGチャットボットは、そのための最も効果的な第一歩と言えるでしょう。
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A1: 本記事でご紹介した基本的なRAGチャットボットの作成には、プログラミングの知識は一切必要ありません。ドラッグ&ドロップやテキスト入力といった直感的な操作で構築が可能です。より複雑な連携やカスタマイズを行う際には、APIの知識などがあると活用の幅が広がります。
A2: はい、もちろんです。Word、PDF、Text、Markdownなど、様々な形式のドキュメントに対応しています。社内規定集、業務マニュアル、製品カタログ、FAQリストなど、テキストベースの資料であれば、同様の手順で簡単にAIチャットボット化することが可能です。
A3: 回答精度を向上させるには、主に3つのポイントがあります。
高品質なデータソース: 元となるドキュメント(就業規則など)が整理され、情報が正確であることが最も重要です。
適切なチャンク設定: ドキュメントの内容に合わせて、チャンクのサイズやオーバーラップを調整することで、検索精度が向上します。
優れたプロンプト: AIへの指示(プロンプト)を具体的に、かつ明確に記述することが、期待通りの回答を得るための鍵となります。
Dify: オープンソースのLLMアプリ開発プラットフォーム。ノーコード・ローコードでAIエージェントやRAGアプリケーションなどを構築できる。
RAG (Retrieval-Augmented Generation): 大規模言語モデル(LLM)が回答を生成する際に、外部のナレッジベースから関連情報を検索し、その内容に基づいて回答を生成する技術。ハルシネーション(もっともらしい嘘の回答)を抑制し、信頼性を高める効果がある。
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