企業の成長に不可欠な新規顧客開拓。その第一歩となるのが、質の高い営業リストの作成です。しかし、多くの企業でこのリスト作成業務は、依然として人手による地道なWeb検索やコピペ作業に依存しているのが現状ではないでしょうか。「膨大な時間がかかる」「人件費がかさむ」「単純作業で担当者のモチベーションが上がらない」といった課題は、営業部門共通の悩みと言えます。本記事では、こうした課題を根本から解決するソリューションとして、ノーコードAI開発プラットフォーム「Dify」を活用した営業リスト作成の完全自動化について、弊社代表の岡田とエンジニアの秋月による対談形式で徹底解説します。対談では、具体的なワークフローの構築手順から、人手作業と比較してコストを最大60分の1に削減した驚くべき実績、そして24時間365日稼働するAIならではのメリットまで、実践的なノウハウを余すところなく公開します。この記事を読めば、あなたもAIを活用して、営業の生産性を飛躍的に向上させる第一歩を踏み出せるはずです。Difyによる営業リスト作成の革命AIで営業リスト作成はどう変わるのかこれまで営業担当者やアシスタントが時間をかけて行っていたリサーチ業務。それをAI、特にDifyのようなプラットフォームがどのように変革するのでしょうか。対談では、まずDifyを使った営業リスト作成の具体的な仕組みが語られました。岡田:今回はDifyを使って営業リストを自動作成する方法について解説します。まず、スプレッドシートにアタックしたい企業のリストを用意します。この企業名リストをインプットとしてDifyのワークフローを動かすと、AIが自動で各企業のWebサイトを検索し、会社概要や事業内容、従業員数、電話番号といった重要情報を抽出して、最終的にリストとして出力してくれるという仕組みです。秋月:これは、これまでアルバイトの方などが手作業で検索し、スプレッドシートに一つひとつ転記していた作業を、完全に自動化したものですね。岡田:その通りです。しかも、単に情報を取ってくるだけではありません。「自社のペルソナに合った会社かどうかを判定させる」といった、独自のロジックを組み込むことで、自社だけのオリジナル営業リストを自由に生成できるのが大きな強みです。例えば、「特定のキーワードで技術ブログを書いている企業」や「特定の業界(例:りんご農家)でWebサイトがヒットする企業」だけをリストアップする、といった高度な使い方も可能です。なぜDifyが最適なのか営業リスト作成の自動化ツールは他にも存在しますが、なぜDifyが特に有効なのでしょうか。その理由は、Difyが持つ柔軟性と拡張性にあります。岡田:Difyの強みは、ワークフローを視覚的に、かつ自由に組み立てられる点です。プログラミングの知識がなくても、必要な機能(ノード)をドラッグ&ドロップでつなぎ合わせていくだけで、複雑な処理フローを構築できます。秋月:今回のワークフローでは、Web検索を行う「Jina Search」、LLM(大規模言語モデル)を呼び出す「LLM」、特定のURLから情報を取得する「Web Scraper」といった複数のノードを組み合わせています。このように、様々な機能を柔軟に組み合わせられるのがDifyの魅力ですね。岡田:また、エラーハンドリング機能が非常に優秀なのもポイントです。Webサイトの構造が想定と違ったり、LLMのサーバーが一時的に落ちていたりしても、処理を自動でリトライさせたり、エラー内容を記録して処理を続けたりといった設定が簡単に行えます。これにより、長時間の自動実行でも安定した稼働が実現できています。実践!Dify営業リスト作成ワークフロー完全解説ここからは、実際に対談で共有されたDifyのワークフローを、ステップごとに詳しく解説していきます。この手順に沿って設定すれば、誰でも営業リスト作成の自動化を実現できます。ワークフローの全体像まず、自動化の心臓部となるワークフローの全体像を把握しましょう。岡田:これが実際に稼働しているワークフローです。左から右に処理が流れていきます。インプットとして会社名を受け取り、Web検索、URL抽出、ページ情報の取得、LLMによる情報整形、そして最終的な出力という流れです。ステップ1: 企業名のインプットとWeb検索自動化の最初のステップは、起点となる企業名を与え、関連情報をインターネット上から検索することです。岡田:まず、API経由で会社名をインプットとして受け取ります。そして、Difyの「Jina Search the Web」というノードを使って、その会社名でWeb検索を実行します。ここでのポイントは、不要な情報を削ぎ落とすことです。今回はテキスト情報がメインなので、「Image Captions」のような画像関連のオプションはすべてオフにして、処理を軽量化しています。ステップ2: 会社概要ページのURLを抽出する次に、検索結果の中から最も確度が高い「会社概要」ページのURLだけを正確に抽出します。ここでもAI(LLM)が活躍します。岡田:Jinaの検索結果には複数のURLが含まれているため、LLMを使って「会社概要ページのURLだけを抽出する」という処理を入れます。ここで重要なのはコスト意識です。このような単純な抽出作業であれば、高性能なモデルは必要ありません。私たちは「GPT 4o-mini 」のような、高速かつ低コストなモデルを意図的に選択しています。これにより、全体の運用コストを大幅に抑えることができます。ステップ3: ページ内情報の取得と整形特定した会社概要ページにアクセスし、必要な情報を抜き出します。岡田:抽出したURLにDifyのWeb Scraperノードで直接アクセスし、ページ全体のテキスト情報を取得します。その後、取得したテキスト情報と最初の検索結果を束ねて、再度LLMに渡します。ここで、「以下の情報から、従業員数、電話番号、代表者名、事業内容をJSON形式で出力してください」といった指示(プロンプト)を与えることで、非構造化テキストデータから構造化されたデータを生成させます。ステップ4: 安定稼働の要「エラーハンドリング」自動化ワークフローを24時間安定して動かすためには、予期せぬエラーへの対策が不可欠です。秋月:エラーが出るパターンはいくつかあります。例えば、LLMのサーバーが一時的にダウンしている、あるいはLLMが期待通りの形式(例: JSON)で出力してくれない、といったケースです。Difyのエラーハンドリング機能を使うと、こうした事態に柔軟に対応できます。岡田:Difyのバージョンが上がってから、このエラーブランチ機能が非常に使いやすくなりました。もともとはこの機能がなかったので、よく処理が止まってしまっていたんです。秋月:具体的には、「失敗時の再実行(Retry on Failure)」設定で、エラー発生時に最大3回まで自動でリトライさせることができます。また、「エラーブランチ(Error Branch)」を使えば、エラーが発生した場合に別の処理(例えば、エラー内容を記録して通知する)に分岐させることも可能です。これにより、ワークフロー全体の堅牢性が格段に向上しました。AI自動化がもたらす驚異的なコスト削減効果このDifyワークフローは、どれほどのインパクトをもたらしたのでしょうか。対談では、具体的なコスト削減効果が語られました。人手作業との比較:コストは60分の1に岡田:この仕組みで、だいたい1日あたり3000〜5000件の営業リストを作成できます。コストにすると、1件あたり約1円です。秋月:これをもしアルバイトの方が手作業でやるとどうなるか、試算してみましょう。どんなに速い人でも、1社の情報を調べて転記するのに最低2分はかかりますよね。岡田:そうですね。時給1,200円と仮定すると、1時間で30件。つまり、1件あたりのコストは40円になります。実際には集中力の問題で1件3分かかることも考えられるので、その場合は1件60円です。秋月:つまり、AIに任せることで、コストを40分の1から60分の1にまで削減できたということですね。これは驚異的な数字です。比較項目人手による作業(時給1,200円)Difyによる自動化1件あたりの作業時間約2〜3分数十秒1件あたりのコスト約40円〜60円約1円1日の処理可能件数約160〜240件(8時間労働)3,000〜5,000件稼働時間労働時間内24時間365日AIは疲れない。24時間稼働の圧倒的メリットコストだけでなく、量の面でもAIは人間を圧倒します。秋月:このワークフローは、私たちが寝ている夜間にも休むことなく動き続けてリストを生成してくれます。AIは疲れませんから。岡田:そうなんです。日中に他の業務をしながら、裏ではAIが大量のリストを作成し続けてくれる。朝出社したら、その日アプローチすべきリストが数千件単位で出来上がっている。これは、営業活動のスピードと質を根本から変える力があります。秋月:人間がやると苦痛に感じるような大量の単純作業こそ、AIが最も得意とするところですね。まさに適材適所です。まとめ今回は、ノーコードAI開発プラットフォーム「Dify」を活用して、営業リスト作成を自動化する具体的な方法とその効果について解説しました。本記事でご紹介したワークフローは、単なる一例に過ぎません。Difyの柔軟な機能を活用すれば、業界やターゲットに応じて、より高度で自社に最適化された営業リスト作成システムを構築することが可能です。圧倒的なコスト削減: 人手作業の最大60分の1のコストで、高品質なリストを生成。生産性の飛躍的向上: 24時間365日稼働し、人間では不可能な量のリストを短時間で作成。営業の質の向上: 単純作業から解放された営業担当者は、より創造的で戦略的な活動に集中できる。独自のリスト作成: 自社のペルソナに基づいた、競合他社にはないオリジナルの営業リストを構築可能。これまで「時間とコストがかかるのが当たり前」だった営業リスト作成は、AIの活用によって、もはや企業の競争力を左右する戦略的な業務へと変わりつつあります。この変化の波に乗り遅れないために、まずはスモールスタートでも、Difyのようなツールを使って業務自動化の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。その業務課題、AIで解決できるかもしれません「AIエージェントで定型業務を効率化したい」「社内に眠る膨大なデータをビジネスに活かしたい」このような課題をお持ちではありませんか?私たちは、お客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、本記事でご紹介したような最新のAI技術を活用して、ビジネスを加速させるための最適なご提案をいたします。AI戦略の策定から、具体的なシステム開発・導入、運用サポートまで、一気通貫でお任せください。「何から始めれば良いかわからない」という段階でも全く問題ありません。 まずは貴社の状況を、お気軽にお聞かせください。>> AI開発・コンサルティングの無料相談はこちらFAQQ1: Difyを使うのに、プログラミングの知識は必要ですか?A1: いいえ、基本的な操作にプログラミング知識は不要です。Difyはノーコード/ローコードプラットフォームであり、画面上でブロック(ノード)を繋ぎ合わせることで視覚的にアプリケーションを構築できます。ただし、API連携やより複雑なロジックを組む際には、若干の技術的知識があった方がスムーズです。Q2: 営業リスト作成の自動化にかかるコストは、具体的にどのくらいですか?A2: コストは、使用するLLMのモデルと処理量によって変動します。本記事の事例のように、情報抽出のプロンプトを工夫し、処理内容に応じてClaude 3 Haikuのような低コストなモデルを使い分けることで、1件あたり1円程度という非常に低いコストでの運用が可能です。Q3: どのような企業情報を取得できますか?A3: Webサイトに公開されている情報であれば、基本的にどのような情報でも取得可能です。対談で言及された会社名、代表者名、電話番号、従業員数、事業内容といった基本情報はもちろんのこと、プロンプトを工夫することで「導入事例ページの有無」「特定の製品に関する記述」「プレスリリースの最新更新日」といった、よりニッチな情報を抽出することもできます。注釈・関連リンクDify: オープンソースのLLMアプリケーション開発プラットフォーム。ノーコードでAIチャットボットやAIエージェントを構築できる。 Dify公式サイトJina Search: AIを活用したニューラル検索フレームワーク。Webサイト、画像、動画など様々なデータを対象に高度な検索ができる。LLM (Large Language Model): 大規模言語モデルの略。GPTシリーズやClaude、Geminiなどが代表的。API (Application Programming Interface): ソフトウェアやプログラム、Webサービス間で情報をやり取りするためのインターフェース。