【実践レビュー】Gemini AI Studioはエンジニアの仕事を奪うのか?自然言語でアプリを爆速開発してみた
最終更新日:
2025.6.11

監修者情報

岡田 徹
NOVEL株式会社 代表取締役
大阪大学在学中よりエンジニアとして活動し、複数のプロダクト立ち上げを経験。
2019年2月にNOVEL株式会社を設立。
2022年より生成AI領域に特化し、
AIライティングSaaS『SAKUBUN』(累計70万回利用・2万アカウント)を企画・開発。大手メディアや人材企業・出版企業への導入実績を持つ。
現在は中堅企業向けAIコンサルティングに注力し、製造業・小売業・金融機関など業種を問わず、生成AIの導入から定着までを一気通貫で支援している。
著書: 『2冊目に学ぶ ChatGPTプロンプト攻略術』(C&R研究所、2024年)
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2025年、生成AIの進化は留まることを知らず、もはや私たちの日常業務に欠かせないツールとなりつつあります。そんな中、Googleが提供する「Gemini AI Studio」に、業界を震撼させる新機能が搭載されました。それが「Build」機能です。
この機能は、私たちが普段使っているような自然言語、つまり日本語で「こんなアプリが欲しい」と指示するだけで、AIが自動でアプリケーションを開発してくれるという、まさに魔法のようなツールです。OpenAIのPlaygroundなど、類似の環境はこれまでにも存在しましたが、Gemini AI Studioのビルド機能は一線を画します。それは、単にコードを生成するだけでなく、即座に操作可能なWebアプリケーションとして提供してくれる点にあります。
これは、プログラミングの専門知識がない人でも、アイデアさえあれば誰でも開発者になれる時代の到来を意味するのでしょうか?そして、私たちエンジニアの仕事は、いずれAIに奪われてしまうのでしょうか?
今回は、弊社代表の岡田が実際にGemini AI Studioのビルド機能を試し、その驚くべき性能と、現時点での限界についてエンジニアの秋月と議論しました。本記事では、その詳細なレビューと考察をお届けします。
岡田(代表): 最新AIツールへの感度が高く、自ら積極的にハンズオンを行う。今回はGemini AI Studioの可能性に衝撃を受ける。
秋月(エンジニア): 岡田のレビューを冷静な視点で分析するエンジニア。ツールの実用性と技術的な背景を考察する。
岡田:まず試してみたかったのが、具体的な業務改善に繋がるアプリケーションの開発です。そこでGemini AI Studioに、次のような指示を出してみました。
「契約書のワードファイルを与えたら、法務リスクをレビューしてくれるツールを作ってほしい。仕様として、ファイルをアップロードする形式で、レビュー結果を分かりやすく表示してほしい。」
驚いたことに、この簡単な指示だけで、AIが自ら仕様を解釈し、推論(Reasoning)を始めました。そして、ものの数分で画面上にコードが次々と生成されていったのです。

秋月:まるでSF映画のようですね。類似のツールとして「CLINE」のようなAI搭載エディタもありますが、それらとの違いはどこにあるのでしょうか。
岡田:最大の違いは、生成されたコードが、そのまま操作可能なWebアプリケーションとして、すぐにプレビュー表示される点です。これまでのツールでは、生成されたコードをローカル環境にコピーし、依存関係を解決し、サーバーを立ち上げて…といった手順が必要でした。しかしGemini AI Studioでは、そのすべてが不要です。
さらに驚くべきことに、アプリケーションを動かすために必要なAPIキーなども、裏側でプリセットされているようなのです。詳しい仕組みは分かりませんが、おそらくGoogle Cloudの環境変数か何かが自動で設定されているのでしょう。完成したアプリは、そのままGoogle Cloud Runにデプロイして一般公開することも可能なようです。

岡田:実際に生成されたアプリがこちらです。試しに、インターネットで拾ってきた業務委託契約書の雛形(Wordファイル)をアップロードしてみました。

岡田:すると、各条項に対して「こういうリスクがあるのではないか」というレビュー結果がしっかりと表示されました。条文を一つひとつ解釈し、潜在的な問題を指摘してくれています。
ただ、興味深い点もありました。同じ指示を再度与えてみたところ、昨日作ったものとは全く違うUIのアプリケーションが生成されたのです。

秋月:なるほど。同じ指示でも、生成されるプロンプトやデザインに「ブレ」があるのですね。とはいえ、どちらのUIも直感的で分かりやすく、実用レベルに見えます。違和感は全くありません。
岡田:そうなんです。どちらもデザインが洗練されていて、AIがUX/UIまで考慮して設計していることが伺えます。プロンプトも裏側で自動生成されており、その内容によってアウトプットの形式が変わるのでしょう。ちなみに、なぜかデフォルトで使われるモデルは、何度やっても最新の「Gemini 2.5 Flash」が設定されていました。
手応えを感じた岡田は、さらにいくつかのアプリケーション開発を試みました。しかし、ここからGemini AI Studioの現状の限界も見えてきます。

岡田:次に、PDFファイルを読み込んで内容を要約するアプリを作ってみました。これは問題なく動作したのですが、一つ不可解な点がありました。数十ページあるはずのPDF資料を読み込ませたところ、なぜか特定のページで処理が止まってしまうのです。
秋月:何らかの内部的な制限、例えば処理できるトークン数やページ数に上限が設けられているのかもしれませんね。無料のプレイグラウンド環境であるがゆえの制約でしょうか。
岡田:おそらくそうでしょう。たたき台としては十分使えますが、長大なドキュメントを扱うような本格的な業務には、まだ調整が必要なようです。

岡田:さらに、「YouTube動画のURLを入力したら、内容を要約してくれるアプリ」をリクエストしてみました。これは、残念ながら全く機能しませんでした。AIからの回答は「YouTubeへアクセスできないため、文字起こしができません」というもの。
秋月:これは技術的な制約が明確ですね。Gemini AI Studioが動作しているサンドボックス環境から、外部の特定サービス(この場合はYouTube)へのアクセスがポリシー上、あるいは機能的に許可されていないのでしょう。
岡田:そうだと思います。現状では、純粋なLLM(大規模言語モデル)の能力で完結できるタスクに限定されるのかもしれません。字幕データAPIとの連携などが実現すれば可能になるかもしれませんが、まだそこまでの連携はできていないようです。
岡田:最後に、SEOを意識した記事を生成するアプリ開発に挑戦しました。まず「キーワードを入れるだけで記事を生成する」という基本機能は、問題なく作れました。

岡田:しかし、ここからが問題でした。「上位記事を検索し、その内容を参考にする」「競合サイトの見出しをリストアップし、構成案を作成する」といった、より高度な機能を追加しようと指示を重ねていきました。すると、途端に動作が不安定になり、最終的にはJSON形式で出力されるはずの見出しデータがうまく生成されず、エラーで動かなくなってしまいました。
秋月:まさに「AIあるある」ですね。最初のたたき台作成は非常に優秀でも、複雑な機能追加や仕様変更を繰り返すと、全体の整合性が取れなくなって破綻してしまう。デバッグしようにも、AIが生成した複雑なコードを人間が解読して修正するのは、かえって手間がかかる場合もあります。
一連の試行錯誤を経て、岡田と秋月は、この技術がエンジニアの未来に与える影響について議論を深めました。
岡田:これだけのものが数分で作れてしまうと、正直、ジュニアエンジニアの仕事は危ういかもしれないと感じました。いや、もはや「危ない」を通り越しているかもしれません。
秋月:確かに、ゼロから簡単なWebアプリのたたき台を作る、といった定型的なコーディング業務は、近い将来AIに代替される可能性が非常に高いでしょう。仕様書を基にHTMLやCSS、簡単なバックエンドのコードを書くといった作業は、まさにGemini AI Studioが得意とするところです。
岡田:一方で、今回の検証で明らかになったように、AIはまだ万能ではありません。機能追加で破綻したSEO記事ジェネレーターのように、複雑な要件を整理し、安定して動作するシステムを設計・実装するスキルは、依然として人間にしかできません。
秋月:その通りです。外部APIとの連携、パフォーマンスの最適化、セキュリティの担保、そして何より、顧客の曖昧な要求を汲み取って最適な技術仕様に落とし込む「要件定義」の能力は、今後ますます重要になります。AIを、仕事を奪う「脅威」としてではなく、開発プロセスを劇的に高速化する「強力なアシスタント」として使いこなす視点が不可欠です。
岡田:つまり、エンジニアに求められるスキルセットが変化していくということですね。単純なコーディング能力よりも、AIというツールをいかにうまく活用して、より高度で創造的な課題を解決できるかが問われる時代になる。
今回、Gemini AI Studioのビルド機能を試した結果、その計り知れないポテンシャルと、現時点での明確な限界の両方が明らかになりました。
【Gemini AI Studioの現状】
メリット・得意なこと
自然言語の指示だけで、即時利用可能なWebアプリケーションを爆速で開発できる。 開発環境の構築が一切不要で、アイデアを即座に形にできる。 基本的なアプリのたたき台やプロトタイプの作成能力は非常に高い。 生成されるUI/UXは洗練されており、実用レベル。
デメリット・苦手なこと
複雑な機能の追加や、度重なる仕様変更には対応しきれず、破綻しやすい。 外部サービス(YouTubeなど)との連携が必要なタスクは実行できない。 内部的な処理制限(ページ数など)が存在する可能性がある。 生成されるアウトプット(UIなど)にはブレがある。
結論として、Gemini AI Studioは、現時点ですべてのエンジニアの仕事を代替するものではありません。しかし、アプリケーション開発のあり方を根本から変える「革命の第一歩」であることは間違いないでしょう。
今後は、AIが生成したコードを人間がレビューして修正したり、AIに設計思想を学習させてより複雑な開発を任せたりといった、人間とAIの新たな協業スタイルが生まれてくるはずです。
私たちは、この強力なツールを恐れるのではなく、積極的に使いこなし、これまで以上に創造的で価値の高い仕事に集中していく必要があります。Gemini AI Studioは、その未来を垣間見せてくれる、非常にエキサイティングな存在だと言えるでしょう。
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Google AI Studio (Gemini AI Studio): Googleが提供する、生成AIモデル「Gemini」をブラウザ上で手軽に試せる開発者向けツール。プロンプトのテストや、本記事で紹介した「ビルド」機能によるアプリケーション開発などが可能。
OpenAI Playground: ChatGPTの開発元であるOpenAIが提供する、同社のAIモデルをテストするための開発者向けプラットフォーム。
CLINE: AIを搭載したコードエディタ。コードの自動生成、修正、チャットによる質問などが可能で、開発者の生産性を向上させる。
Google Cloud Run: Google Cloudが提供するフルマネージドのコンピューティングプラットフォーム。コンテナ化されたアプリケーションをサーバーレスで実行できる。
Gemini 2.5 Flash: Googleが開発したマルチモーダル対応の軽量・高速なAIモデル。コスト効率とパフォーマンスのバランスに優れている。
JSON (JavaScript Object Notation): データ交換フォーマットの一つ。軽量で人間にも読み書きしやすく、Webアプリケーションなどで広く利用されている。
サンドボックス環境: 外部から隔離された、安全な仮想実行環境。システムに影響を与えることなくプログラムをテストするために使用される。
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