この記事は、DX推進部門や情報システム部門を持つ企業の皆様に向けて作成いたしました。特に、複数の部署を横断的に見渡し、新しいシステムやツールを一括導入できる立場にいらっしゃる方にとって、すぐに役立つ内容となっております。この記事では、生成AI導入のロードマップを4つのステップで紹介します。各ステップの随所でアプローチ法やコツ、注意点なども以下に分けて解説します。「生成AIを導入したいけど、どこから手をつければいいかわからない」というように、少し出遅れてしまった企業もこれを見ればすぐに概要がつかめます。もし面白かったら社内でシェアしてみてください!【前提】生成AI導入のロードマップで目指すべきゴール生成AI導入のロードマップにおける今回のゴールは、社内に生成AIを取り入れて業務の生産性を高めることです。その結果として、売上の増加とコストの削減を実現することを目指します。生成AIをどのような業務に適用できるかを洗い出す過程では、ボトムアップとトップダウンの両方のアプローチを組み合わせます。ゴールを目指す基本のアプローチは「使う」こと社員がAIに対する理解を深めていなければ、有効なアイデアを出す時点で困難を極めることから、「使ってみる」という段階からスタートしてください。実際に生成AIを体験しながら社員のAIに対する理解を深めつつ、実装へと進んでいくことが望ましいです。【全体像】生成AI導入のロードマップの流れ今回、弊社が紹介する生成AI導入のロードマップは以下の4ステップで構成しました。生成AIを触れる環境を導入するChatGPTを配布する利用用途を分析する具体的な業務効率化アイデアを検討する【STEP1】生成AIを触れる環境を導入するまず、生成AIを実際に触れる環境を導入します。今回のロードマップで定めた『使ってみる』というアプローチを行える環境整備を行うためです。どういったツールを導入すべきか?今回のロードマップでは、OpenAIが開発したChatGPTの機能や性能を模倣した別のAIシステムや環境のクローン環境を推奨します。クローン環境であれば汎用性が高く、生成AIの可能性を幅広く試すのに適しているためです。ChatGPTをそのまま導入するのはおすすめできない対話型で使えるChatGPTをそのまま使うことも可能ですが、セキュリティやユーザー管理の観点からあまりおすすめはしません。ChatGPT側の設定ミスにより、入力内容が再学習用データとして外部に流出する、またユーザー管理や権限設定が細かくできないため、企業での運用に私的利用等の課題も生じます。生成AIに触れる環境の選択肢ここまでの内容を踏まえて、生成AIを触る環境として選べる選択肢は、簡単に分けると以下の3つです。メリットとデメリット、価格の面でも違いがありますが、SssSを使うことになるはずです。ChatGPTをそのまま使うChatGPT系のSaaSツールを使う自社でホストして構築するそれぞれの特徴とメリット、デメリット等を下表にまとめたのでご覧ください。ツール名ChatGPT TeamsChatGPT EnterpriseChatGPT系のSaaSツール自社でホストする価格$25-30/ユーザー/月(100名で35万/月)要見積もりサービスにより異なる初期費用100〜200万円、運用10万円/月程度(100名規模の場合)オプトアウト(再学習データとして使わない設定)〇(デフォルト)〇(デフォルト)〇(デフォルト)〇(デフォルト)カスタマイズ性低規模により異なるサービスにより異なる高導入の容易さ高大規模向け中低メリット常時オプトアウトで利用できる、新たに構築しなくて済む常時オプトアウトで利用できる、カスタマイズ性が高い導入しやすい、キャンペーンで月額無料で利用できることがあるランニングコストが低い、カスタマイズ性が高いデメリット人数分だけ費用がかかる、カスタマイズ性が低い大規模向けで中小企業は利用しにくい、コストを把握しにくい(要お問合せのため)カスタマイズや導入方法はサービスにより異なる初期構築に費用がかかる、構築に期間がかかるロードマップでの利用可能非推奨おすすめ非推奨関連記事-「ChatGPT Enterprise」の特徴を見てみる--ロードマップのステップ1でつまづいてしまった。ということも実際には非常に多いです。そうなった場合には、ぜひ弊社へお気軽にご相談ください。ロードマップと同様に段階的に生成AIを導入するサポートで、すぐに動きだせる環境を整えられます。>>お問い合わせはこちら【STEP2】ChatGPTを配布する生成AI導入のロードマップにおけるステップ2では、ChatGPT(クローン環境等を含む)を実際に配布します。ChatGPTの配布対象については、多くの社員が関心を示さない傾向にあるため、経済的な観点から希望者のみに配布することをおすすめします。実際、日米企業においての利用率を比較した場合、約7%と非常に低いです。出典:MM総研|「日米企業におけるChatGPT利用動向調査」(2023年5月末時点)(https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=580)より弊社で新たに作成日本企業の利用率を踏まえた上で、内部での利用率は約20%程度にとどまると言われており、興味がある人としない人の差が顕著です。出典:株式会社野村総合研究所(NRI)日本のChatGPT利用動向(2023年4月時点)(https://www.nri.com/jp/knowledge/report/lst/2023/cc/0526_1)より弊社で新たに作成このことからも、ChatGPTの配布対象は『希望者のみにした方が効率が良い』といえます。運用をスタートする際の注意点実際の運用においてメール文の作成などの単純なタスクであれば、品質に大きな問題は起きないものの、少し複雑なタスクを依頼しようとするとすぐに限界がきます。そのため、ChatGPTは「プレイグラウンド」(お試し広場)のような位置づけで利用するのが最適です。また、ステップ3では分析を行うため、必要な準備(例えばデータの収集方法や項目など)もスタート前にご用意ください。認知のために社内勉強会を開催するChatGPTを配布する前に、生成AIの活用方法やリスクについて社内勉強会を開催することも有効な策です。講師には社内で最も知識のある社員を起用するか、AIに特化した企業に依頼するのが良いでしょう。関連記事:現代に必須のビジネススキルを学ぶ「生成AI研修」とは配布から様子を見る期間は2〜3か月ChatGPTの効果的な運用では、社員がツールに慣れるまで2〜3ヶ月程度の期間を設けることをおすすめします。1か月では、慣れるまでの期間としては短すぎますし、4か月まで進めると風化してしまう可能性があるためです。内容としては、例えばChatGPTの有効な使用方法や成功事例を共有するなどで、利用促進につなげるなどが挙げられます。【STEP3】利用用途を分析する生成AI導入のロードマップのステップ3は、分析で社員が生成AIツールをどのように活用しているか、あるいは今後どのように活用したいと考えているかを調べます。社員からの入力内容をリストにまとめ、AIを活用して分析を行うことで生成AIツールの導入や改善に向けた貴重な情報源として利用可能です。利用用途の分析で収集したいデータの例この生成AI導入のロードマップの流れを踏まえて、利用用途の分析で用意したいデータの例には以下が挙げられます。利用者名利用部署・職種利用頻度(1日あたりの利用回数)利用時間(1回あたりの平均利用時間)利用目的カテゴリ(例:文書作成、アイデア出し、コード生成、データ分析)入力プロンプト出力テキストユーザー満足度(5段階評価)具体的な使用事例(自由記述)使った際に入力してもらう、ということが大変ならクローン環境に入力値等を保管できるような仕組みを作っておくと良いでしょう。分析に使用できる生成AIツール分析に使用できる生成AIツールは、すでに用意したChatGPT(クローンを含む)でも構いません。データを入力し、得たい情報のみの洞察を提供するようにプロンプトで指示してください。分析方法と評価指標の例は以下のとおりで、おおまかな傾向さえわかれば問題ありせん。分析項目指標部署別・職種別の利用状況部署別・職種別の利用率、平均利用時間利用目的の傾向分析主要トピックの抽出と分布ユーザー満足度分析平均満足度、満足度と利用頻度の相関使用事例のクラスタリングクラスター数、各クラスターの特徴トレンド分析将来の利用率予測、季節性の有無【STEP4】具体的な業務効率化アイデアを検討する生成AI導入におけるロードマップの最後は、以下を実施して潜在的なユースケースを検討することです。「興味深い!」「面白い!」「これはいいぞ!」と言う使い方をしている社員から話を聞くアイディアソン(特定のテーマに対して多様なメンバーがアイデアを出し合うイベント)を開催する具体的な業務効率化アイデアを見つける際には、以下2点を満たしているかで判断してください。マッチしている場合はAIの強みを活かしつつ、導入による具体的な効果(を数値化しやすいため、妥当性も判断しやすくなります。生成AIが得意な業務であることROI(Return On Investment:投資収益率)がわかりやすいことなぜ単に使うだけでは業務生産性があまり変わらないのか生成AIやChatGPTは確かに業務に役立つものの、まだ不十分な点も多いからです。汎用的なツールであるため複雑な業務への対応が難しく社内の文脈を理解できない、多くの人が専門知識を要するプロンプト作成に苦手意識を持っていることが主な理由です。では、議論の結論を導き出すために必要となる、『何なら生成AIで対応できるの?』という部分にも触れておきます。生成AIと相性の良い3つの業務まず、現時点では生成AIはテキスト処理関連の業務が最も得意だと言えます。コンテンツ制作、要約、検索などがその例です。業務タイプ特徴例単純作業的な業務テキスト処理で完結する、または繰り返し作業書面のOCRとExcelへの転記アイディア出しの業務パターン出しがほぼコスト0で可能キャッチコピーの作成検索を伴う業務ベクトル検索(RAG)により曖昧な検索が可能社内データの検索イメージが湧きにくい方に向けて、次ではロードマップをベースに生成AI導入を行う際にピッタリなユースケースを3つ紹介しておきます。生成AI導入で少しでも悩みや疑問があればお気軽にお問い合わせください。貴社の業務に合わせた生成AIの導入を「検討段階」からサポートいたします。>>お問い合わせはこちらロードマップを活用できる生成AI導入の3つのユースケース生成AI導入のロードマップを実践する際、多くの企業で効果的に適用できる3つの代表的なユースケースを紹介します。ヘルプデスクとして利用するビジネスパーソンは、1日にして平均1時間5分、週に換算すると約5時間(約4.5%)を情報検索に利用すると言われています(※)。業種によっては、2〜3時間程度を費やすこともあり、この場合では約20%を情報検索に取られてしまうのです。この情報検索の時間を削減するため、社内ヘルプデスクにAIを導入する企業は少なくありません。出典(※):PR TIMES(エンタープライズサーチに関する実態調査)(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000190.000027275.html)顧客向けチャットボットを作る生成AIを活用したチャットボットは、ヘルプデスクと同様に社内データを効率的に利用できます。顧客からの質問を自動的に分類できる条件に応じて適切な回答を生成できる必要に応じてマニュアルなどから情報を検索し、回答に付加できる(RAG技術の活用)など、従来のルールベースのチャットボットと異なり、あいまいな質問に対しても柔軟に対応できます。関連記事:より効果的に生成AIに進化させるRAGの活用事例・ユースケースコールセンター業務の効率化を狙うコールセンターに生成AIを導入することで、オペレーターの業務を効果的にサポートできます。以下のようにオペレーターは顧客との会話に集中しつつ、必要な情報をタイムリーに得ることができます。高精度な音声認識技術を用いた通話内容の自動書き起こし書き起こしたテキストの要約生成オペレーターへのリアルタイムな情報提供少しでも悩めば生成AI開発に強い企業に依頼する生成AI開発を検討する際は、AI分野に特化した企業に依頼することをおすすめします。従来のAIと比較して、生成AI、特に大規模言語モデルの開発手法は大きく異なっているからです。また、迅速な反復と継続的なフィードバックにより、市場ニーズに即した製品開発が可能になり、リスクを軽減しながら品質向上も図ることができます。具体的なサービスを見てみる:生成AI活用・導入支援サービス生成AI導入は生成AI開発×アジャイルに対応したNOVELへ弊社、NOVELは生成AI開発とアジャイル開発の両方に豊富な経験から打ち出された技術で、お客様と伴走しながら適切な生成AIの導入をサポートいたします。まだ何も決まっていない、という生成AI活用の初期段階であっても、お気軽にご相談ください。豊富な経験と専門知識を活かし、お客様のニーズに合わせた最適なソリューションをご提案いたします。弊社では月額定額のAI顧問サービスを提供しています。下記に当てはまる方がいらっしゃいましたら、ぜひご相談ください。・AIを活用して業務生産性を改善したい・なにから手を付けたらよいかわからない・今考えていることの実現性を相談したい書籍出版、2万名が使うAIを構築した専門家が親身にサポートいたします。具体的なサービスを見てみる:生成AI活用・導入支援サービス