システム基礎知識

PoC開発でよくある3つの失敗と、未然に防ぐ発注のコツ

最終更新日:

2026.10.8

PoC開発でよくある3つの失敗と、未然に防ぐ発注のコツ

AIで必要な精度が出るか分からず、まず試作から始めたい。そんなときのPoC開発は、本番の開発へ進む判断に必要なことを確かめる工程です。

発注前に決めるのは、検証する範囲と、結果を受けて次に何をするか。技術的にできないと分かり、中止を選べることも成果です。試すことを増やし続け、本番へ進むか決められない状態を避けましょう。

この記事では、PoC開発を発注する前の判断と準備について説明します。

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PoC開発でよくある3つの失敗

検証の目的が曖昧なまま始める、試すことが増えて終わらない、結果が出ても本番へ進むか決められない。この3つを避けるために、発注前に確認することを分けます。

よくある失敗発注前に決めること
何を確かめるか決めずに始める既製品で試したうえで、試作が必要な疑問を選ぶ
試すことが増えて終わらない検証範囲と終了日、追加作業の扱いを決める
結果が出ても本番へ進むか決められない本番へ進む基準と、終了後の次の動きを決める

何を確かめるか決めずに始める

PoC開発でよくある失敗は、どんなものですか。

岡田確かめることや、ゴールの設定が曖昧なことです。ただ、技術的にできないと分かるのは、ある意味でPoCの成功です。

試すことが増えて終わらない

岡田途中で試すことが増えて、終わらないことはあります。

結果が出ても本番へ進むか決められない

岡田ゴールを決めていても本番へ進めないのは、本番の費用が合わないときと、予算・体制が変わったときです。

PoC開発の前に既製品で試す

まず、既製品で必要な検証ができるかを調べます。別途試作を発注するかは、その結果を見て決めてください。

既製品や公開モデルで確かめる

PoCをやらずに本番から始めた方がよいのは、どんなときですか。

岡田既製品やパッケージがあるか、事例があるかを見ます。たとえば不良品の画像なら、判断の前にまず見せてもらいたいのは画像です。PoCの代わりに試すなら、既存のAIや公開モデルで画像を読み取る方法です。

実データを外部のAIサービスで試す場合は、投入できるデータの範囲を社内で確認してください。

経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」は、提供データの利用範囲や生成物の利用条件を確認するための資料です。想定外の目的でのデータ利用や第三者への提供を、検討すべき懸念として挙げています。 参照:AIの利用・開発に関する契約チェックリストの公表|経済産業省

試作でしか分からないことを残す

既製品の試用で確認できる範囲と、試作でしか確かめられない範囲の比較
図1|既製品の試用と試作の役割の違い

既製品の試用結果を、確認できた点と未確認の点に分けます。画像の読み取りを試したなら、どの画像で何を判定できたかを記録してください。少数の画像を読めた段階では、本番で扱う画像全体の精度までは確認できていません。

試作を頼むなら、残った疑問から本番の判断に必要なものを選びます。たとえば、特定の不良を見逃さず検出できるかという問いです。使う画像と評価方法を決めておけば、試作の後に何を見て判断するかが先に決まる。

PoC開発の範囲と費用・期間を決める

費用と期間は、検証範囲とデータの準備状況をそろえて見積もります。確かめることを絞っても、データ収集やモデルの開発が必要なら、その作業を見積もりに含めます。

期間の回答は1〜2か月

PoCの期間は、どのくらいですか。

岡田期間は概ね1〜2か月です。

費用と期間が変わる3つの条件

費用と期間の幅を変えるのは、何ですか。

岡田幅が変わる要素は次の3つです。

  • 確かめることの数
  • データのそろい具合
  • 既存のモデルで足りるか

見積もりの依頼時には、準備済みのものと、依頼したい作業を分けて伝えます。

見積もりの前提依頼先へ伝える内容
確かめること判定したい対象と、検証する範囲
データの準備使える画像の件数、正解の判定結果があるか、追加収集の要否
モデルの開発既存モデルを使う案か、追加の学習が必要な案か

金額の比較は、各社が見積もった作業をそろえてから行ってください。画像の用意を発注側が行う見積もりと、収集から依頼する見積もりでは、含まれる作業が違います。

追加の検証は見積もりを分ける

試作中に検証を追加するときの協議から文書化までの手順
図2|追加検証を依頼するときの手順

試作中に別の検証を追加したくなったら、当初の範囲と追加分を分けて依頼先と協議します。追加分の費用と終了日を決め、変更内容を文書に残してください。

特許庁のAI向けPoCモデル契約書には、検証対象の拡大などで期間や委託料の変更が必要になった場合の条項例があります。変更の要否を協議し、合意した内容を書面等で契約に反映する手順です。 参照:技術検証(PoC)契約書(AI)・契約内容の変更|特許庁

PoC開発の契約前に次の動きを決める

本番へ進む基準と、PoC終了後の行動を契約前に決めます。発注側でも、判断する人と判断日を決めておきましょう。

PoC契約前に決める4項目と、それぞれに書く内容の一覧
図3|PoC契約前に決める4項目

本番へ進む基準と判断日を決める

契約の前に決めておかないと、終わった後に困ることは何ですか。

岡田PoCが終わった後の次の動きと、本番へ進む基準を決めておくことです。

特許庁のモデル契約書第6条には、報告書の確認完了から2か月以内に、共同研究開発へ進むかどうかの検討結果を通知する例があります。検証後の判断期限を定めた例です。PoC自体の所要期間とは区別します。 参照:技術検証(PoC)契約書(AI)・第6条|特許庁

自社の発注では、精度を何で測るか、許容できる費用はいくらかを記載します。基準を満たしたら本番の見積もりへ進むのか、追加検証が必要なのかも決めてください。判断日には決裁者が参加できるようにします。

検証の責任と成果物の扱いを決める

特許庁のモデル契約書は準委任を前提としています。第5条では、受託側が注意を尽くして検証する義務を負う一方、特定の成果や結果を保証しないと定めています。 参照:技術検証(PoC)契約書(AI)・第5条|特許庁

※モデル契約書の条項例です。個別のPoC契約の責任は、業務内容と契約条項に応じて確認してください。

発注前には、精度の目標と契約上の約束を区別します。報告書に載せる評価結果、受け取るデータやプログラム、利用できる範囲も依頼先と決めておきましょう。知的財産権が誰に帰属するかと、発注側が何に使えるかは分けて確認します。

試作品を本番でも使いたい場合は、その希望を契約前に伝えてください。本番利用の許諾と、本番で必要な性能の確認を、それぞれ依頼内容に含めます。

本番へ進まなくて正解だった3つの場合

PoCの途中に出る兆しと、本番へ進まなくて正解だった3つの場合
図4|本番へ進まない判断の材料

本番へ進まない兆しは、PoCの途中のどこに出ますか。

岡田社内で取り組む意欲が下がっていることです。役員に進める意欲があるかも大切です。

本番へ進まなくて正解だったのは、どんな場合ですか。

岡田本番へ進まなくて正解だったのは、次の場合です。

  • 技術的にできないと分かったとき
  • 費用に見合わないと分かったとき
  • 別の方法が見つかったとき

まとめ|発注前に判断の条件を書き出す

開発会社へ相談する前に、自社の案件で未定の欄を確認してください。

確認すること自社の記入欄
既製品で試した結果と、残る疑問____
検証範囲・用意するデータ・見積もりに含む作業____
終了日と、追加作業を頼む場合の手続き____
本番へ進む基準・判断する人・判断日____

空欄は未定と伝え、依頼先と決める議題にします。検証を終えた後に、本番開発へ進むか、中止するか、別の方法を選ぶか。その判断に必要な結果を受け取れるよう、発注する範囲を決めましょう。

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取材回答/監修
岡田 徹NOVEL株式会社 代表取締役

エンジニア出身。大阪大学在学中から複数のプロダクトを立ち上げ、2019年にNOVEL株式会社を設立。上場企業を含む60件以上のAI導入・システム開発を支援し、見積もりと要件定義は自ら担当する。著書『2冊目に学ぶ ChatGPTプロンプト攻略術』(C&R研究所、2024年)。

公開 2026.10.8|最終更新 2026.10.8

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