日々驚異的なスピードで進化を続ける生成AI。その可能性に期待が寄せられる一方で、ビジネスの現場ではどのように活用され、どのような課題があるのでしょうか。ある日の定例ミーティングが終わり、リラックスした雰囲気の中で始まった雑談。それは、いつしかAIの未来を巡る熱い議論へと発展していました。今回は、AI開発の最前線にいるエンジニアの秋月と、経営者の視点を持つ代表の岡田が交わした、リアルな対話の記録です。現場の生の声から、生成AIの現在地と未来のビジネスチャンスを探ります。登場人物秋月 宏介: エンジニア。技術的な視点からAIの可能性と限界を冷静に分析する。岡田 徹: 代表。経営者としてAI技術をいかにビジネスに結びつけるかを常に模索している。もはやGPT一強ではない。マルチモーダル化するAIの現在地岡田: 最近、GoogleのGemini 2.5 Proの新しいバージョンがアップデートされたという話を聞きました。AIの進化は本当に速いですね。秋月: ええ、特にGoogleのAIは画像、ドキュメント、動画、音声といった複数の形式を同時に扱える「マルチモーダル対応」がすごいですね。以前、GPTでPDFを読み込ませた時はかなり微妙な精度でしたが、Googleの技術は目を見張るものがあります。岡田: 少し前までは「AIといえばGPT」という風潮がありましたが、もはや性能的に一強という時代ではなくなった、と。秋月: まさに。目的に応じて最適なツールを選ぶ「使い分け」が重要になっています。例えば、創造的な文章生成ならこのモデル、正確なデータ分析や画像認識なら別のモデル、といった形です。AI活用ビジネスの光と影。ブームの裏にある本質的な価値とは岡田: AIの進化に伴って、その活用法を教えるオンライン講座や情報商材が流行っているようですね。月額数万円、買い切りで数十万円という価格帯のものもあるとか。秋月: 個人的には、少し懐疑的に見ています。かつてPCやスマートフォンの使い始めに「パソコン教室」や「スマホ教室」が流行ったように、一過性のものになる可能性があります。岡田: なるほど。「Googleでどう検索するか」を教えるビジネスが長続きしなかったのと同じ構図ですね。そもそも、世代によってAIとの向き合い方が全く違うという話も聞きます。秋月: ええ。社会人・年配世代の方はAIを「何かを質問するチャットツール」として使いますが、若者世代は、もっとパーソナルな「悩み相談の相手」として活用している。使い方そのものが違うんです。彼らにとってAIは、わざわざ使い方を教わるものではなく、当たり前にあるツールなんです。岡田: そうなると、高額な講座のターゲットは、いわゆる「情報弱者」になりがちかもしれません。それはビジネスとしてやっていて、少し複雑な気持ちになるかもしれないな。秋月: そう思います。本質的な価値提供とは言えないでしょう。やはり、AIを使って具体的な課題を解決するアプリケーションやサービス開発にこそ、面白さと可能性があります。魔法の杖ではない。AIエージェントへの期待と乗り越えるべき現実岡田: 最近、「AIエージェントが何でも自動でやってくれる」といった、少し過剰な期待を耳にすることがあります。まるで魔法の杖のように捉えられている節がある。秋月: それは非常に危険な誤解ですね。例えば、AIに「こういうワークフローを作って」と指示してコードを出力させても、それをそのまま実行すれば十中八九エラーが出ます。AIはそれっぽいものを生成しますが、細部の整合性までは保証してくれません。岡田: 使い手がその分野の知識を持っていて、AIの出力を検証し、修正できるスキルがなければ、宝の持ち腐れになってしまう。秋月: まさに「番犬」のようなものです。優秀でも、乗り手が制御できなければ意味がない。仮に人間のように自律的に振る舞うAGI(汎用人工知能)が完成したとしても、最初は「意外とこんなものか」というレベルかもしれません。新人アルバイトくらいのクオリティで、時には間違えながらタスクをこなし、結局は人間によるチェックが必要になる、というイメージが現実的でしょう。岡田: AIが得意なのは、これまで人間がやっていた雑務の代替ですよね。例えば、商談の録画データから要点を抜き出すとか。これはアルバイトでもできる仕事です。そういったコスト削減の効果は大きい。秋月: コーディングの世界でも、その傾向は顕著です。同じAIを使っても、経験豊富なシニアエンジニアと若手のジュニアエンジニアでは、引き出せる成果が全く違います。シニアの生産性が3倍になる一方で、ジュニアは1.2倍程度にしかならない、ということも起こり得ます。言語モデルへの指示の出し方が、根本的に違うからです。岡田: デザインの分野でも同じことが言えそうですね。単に「かっこいいデザインを作って」ではダメで、「このコンポーネントを使って、こういうレイアウトで配置して」というように、AIが理解しやすい形式で、細かく指示出しをする必要がある。秋月: その通りです。AIが使いやすいように、人間側がデータやタスクを整理してあげる必要がある。このスキルが、今後のAI時代には不可欠になります。セキュリティ、コスト、そしてローカルLLMという選択肢秋月: 企業のAI導入という観点では、最近、セキュリティを非常に重視する金融系などの業界で、外部にデータを送信しない「ローカルLLM」の需要が高まっています。岡田: 自社のサーバー内でAIを完結させるわけですね。やはり情報漏洩のリスクが一番の懸念点ですから。秋月: ただ、コストの問題があります。NVIDIAの最新GPU「B200」などは1台で数千万円から億を超える価格ですが、そこまででなくても、ある程度の性能を持つGPUサーバーを構築するには数百万円の投資が必要です。岡田: 企業にとっては大きな投資ですが、APIを継続的に大量に利用することを考えれば、結果的に安上がりになるケースもありそうですね。秋月: はい。特に、裏側でバッチ処理が常に回り続けているような、無限の用途でAIを動かし続けるのであれば、自前で持つ方が圧倒的に得です。さらに、自社のデータを学習させてファインチューニングを施し、独自のAIを構築したい場合には、もはやローカルLLMは必須の選択肢と言えます。未来のビジネスチャンスは「現場」にあり。マルチモーダルAIの衝撃岡田: そう考えると、新たなビジネスチャンスも見えてきますね。特に、マルチモーダルAIが進化すれば、これまで不可能だったことが可能になる。かつて、工場の監視カメラで危険行動を検知する案件がありましたが、当時は技術的に難しかった。秋月: 今なら、ワンチャンあるかもしれません。ただ、動画をリアルタイムで継続的に処理するのはまだAIにとって負荷が高い。現実的な解としては、動画から1秒間に何枚か画像を切り出して、それを連続でAIに分析させる、というアプローチになるでしょう。岡田: なるほど。他にも、公共交通の乗降客数をカウントするAIカメラというのもありますが、まだ精度に課題があるようです。秋月: それも技術的には解決可能だと思います。オープンソースの技術もたくさんありますから。例えば、人の流れを検知するストリーミング処理が得意なAIと、30秒に1回といった頻度で状況を分析・言語化するAIを組み合わせる、という2台体制のシステムを組めば、かなり高度なことが実現できるはずです。岡田: それは面白い!工場なら、ヘルメットの色で立ち入り可能なエリアを制限したり、非接触が求められる半導体や食品工場の入退室管理に応用したり。検品作業の自動化も視野に入りますね。秋月: 可能性は無限にあります。これまで人間が目で見て判断していた「現場」の仕事こそ、マルチモーダルAIが最も価値を発揮できる領域かもしれません。結論:AI時代の成功は「人」に懸かっている岡田: いやあ、雑談から始まりましたが、AIの進化がビジネスの前提をいかに変えつつあるか、改めて実感しました。技術はあくまで手段であり、それをどう使ってお客様の課題を解決し、新しい価値を創造するかが我々の使命です。AI時代だからこそ、顧客と深く向き合い、未来を構想する「人」の力が、これまで以上に企業の競争力を左右することになるでしょう。秋月: 同感です。技術者としても、AIの驚異的なポテンシャルと同時に、その限界や特性を正確に理解することの重要性を再認識しました。AIは万能の魔法ではなく、人間がその特性を理解し、正しく導いて初めて真価を発揮するツールです。これからのエンジニアには、単にコードを書く能力だけでなく、AIという強力なパートナーをいかに上手く「使いこなす」かというスキルが、強く求められることになりますね。その業務課題、AIで解決できるかもしれません「AIエージェントで定型業務を効率化したい」 「社内に眠る膨大なデータをビジネスに活かしたい」このような課題をお持ちではありませんか?私たちは、お客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、本記事でご紹介したような最新のAI技術を活用して、ビジネスを加速させるための最適なご提案をいたします。AI戦略の策定から、具体的なシステム開発・導入、運用サポートまで、一気通貫でお任せください。「何から始めれば良いかわからない」という段階でも全く問題ありません。 まずは貴社の状況を、お気軽にお聞かせください。>> AI開発・コンサルティングの無料相談はこちら