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「技術的負債って何?」、「どのように返済すればいいの?」というお悩みはありませんか?現代のソフトウェア開発現場では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やアジャイル開発の普及に伴い、技術的負債という言葉を耳にすることが増えてきたのではないでしょうか。
そこで、この記事では、技術的負債の意味やその返済方法、さらには具体的な事例をわかりやすく解説します。技術的負債の提唱者であるウォード・カニンガムの考え方や、アジャイル開発との関連性および4象限という視点まで触れるため、より良いソフトウェア開発を行うための一助となれば幸いです。


技術的負債とは、ソフトウェア開発において、開発のスピードを上げるために、先々問題になる可能性がある火種を理解しつつも、あえてその開発手法を取り入れることを指します。
つまり、現状の開発スピードを優先し、効率よりも簡単さを重視することで、将来的に改善や修正が必要となる技術的な問題を生むことを意味します。
一見すると非効率的な開発方法に見えるかもしれませんが、短期的には開発スピードを上げるための必要な手段とも言えます。
例えば、新しい機能を追加するために、既存のコードを大幅に書き換える時間がない場合、そのままのコードに新しい機能を追加することで、開発のスピードを維持できます。しかし、その結果、コードの複雑性が増し、将来的には改善や修正が必要となります。この改善や修正が、技術的負債の一例です。
技術的負債は、必ずしも悪であるわけではありません。なぜなら、技術的負債は、現状の開発においてはコストを下げたり、納期を縮めるといったメリットがあるからです。つまり、技術的負債を生むことで、開発のスピードを上げ、プロジェクトの進行までスムーズになるのです。
しかしながら、技術的負債は、その名の通り「負債」であり、いずれ返済が必要となることを忘れてはなりません。そのため、積み重ねることで、将来的には大きなコストを払うことになる可能性があります。
このことから、技術的負債を生むことは、一時的な解決策であり、長期的な視点で見ると、その返済がプロジェクトの進行を阻害するものだと考えておきましょう。
技術的負債の概念は、アメリカの開発者であるウォード・カニンガムが提唱したものです。彼は、開発の現場での経験から、開発のスピードを上げるためには、一時的に技術的負債を生むことが必要であると考えました。そして、その考えをもとに、技術的負債の概念を提唱し、多くの開発者に理解されたのです。
しかし、カニンガムが提唱した技術的負債の概念は、開発のスピードを上げるための一時的な手段であり、長期的にはその返済が必要であるという考えを含んでいます。そのため、技術的負債を生むことは、開発のスピードを上げるための一時的な手段であり、その後の返済を見越した上での判断が求められます。

技術的負債の返済方法は、以下の4つが挙げられます。
アジャイル開発を活用する
リファクタリングを定期的に行う
開発の記録を残す
テストを繰り返す
アジャイル開発とは、短期間で開発とテストを繰り返し、段階的に製品を改善していく開発手法のことです。一定の品質を担保しながら、技術的負債を効率よく減らせます。
具体的には、まずは小さな機能から開始し、その機能が正しく動作することを確認した上で、次の機能に進むという方法を取ります。そのため、大きな問題が発生した場合でも、その影響を最小限に抑えられます。また、開発途中で要件が変更された場合でも、柔軟に対応できるのも特徴です。
このように、アジャイル開発の活用ではその特性上、技術的負債を段階的に返済可能です。
アジャイル開発について知る:【基本】アジャイル開発・スクラムの進め方とポイント
リファクタリングとは、プログラムの外部から見た動作を変えずに、内部の構造を改善する作業のことを指します。実施できれば、コードの可読性を高め、保守性も向上できます。
そしてリファクタリングは、技術的負債の一因となるレガシーコード(古くて保守が困難なコード)の撲滅に一役買います。定期的に行うことで新たな機能の追加や、バグの修正などの問題を未然に防げるでしょう。
なお、リファクタリングは保守運用、引き継ぎ、移管でも使われます。
詳しく見てみる:保守運用の引き継ぎ・移管
開発の過程の記録を残すことも、技術的負債の返済において有効な手段です。なぜなら、問題が発生した際に、その原因を迅速に特定し、適切な対策を立てるためには、過去の開発履歴が必要となるからです。
開発の記録を残しておくことで、問題の発生原因を特定しやすくなるだけでなく、同じ問題が再発した際の対応もスムーズです。また、複数の開発者が同じプロジェクトに参加している場合でも、開発の記録を共有することで、情報の整理や作業の分担も適切に実施できるでしょう。
技術的負債の把握や、定期的なコードの見直しには、単体テストが非常に有効です。単体テストとは、プログラムの一部(モジュールや関数など)を個別にテストすることを指します。
単体テストを行うことで、各モジュールが正しく動作しているかを確認できます。また、テストを繰り返すことで、新たに発生したバグを早期に発見し、修正できます。
ここまで触れた方法を用いると、技術的負債の蓄積を防ぐことができます。また、すでに発生している負債を返済する手段にも有効です。
テストについて詳しく知る:単体テストと結合テストとは?総合テストも含めて徹底解説!


技術的負債が生じる4つの原因を理解するために、開発者体験を悪化させる要素を「慎重」と「無謀」、「意図的」と「無自覚」の4象限にわけて考えてみましょう。この考え方は、アジャイル開発の提唱者であるt_wada氏が提唱した、技術的負債と向き合うための有効なフレームワークです。
意図的 | 無自覚 | |
|---|---|---|
慎重 | 納品を第一優先としており、後から改修する | ベストアンサーで構築したはずが、後になって改修が必要となる |
無謀 | 作業進捗の早さのみを優先して決断する | 正しい知識を持たずして開発が進み、結果として回収が必要となる |
まず、「慎重で意図的」な技術的負債は、納品を第一優先としており、後から改修するパターンです。短期的なビジネス価値を優先するために、一時的に技術的な妥協を選択するケースですね。
例えば、リリース日に間に合わせるために、一部の機能を簡易的に実装したり、テストを省略したりすることが挙げられます。この場合、その後の改修が必要となるため、長期的な視点では技術的負債が増大します。
初期の開発段階での技術的妥協が将来的に大きな負担となるため、プログラムの内部構造を改善し続けることで、可読性と保守性を向上させることができます。
次に、「無謀で意図的」な技術的負債は、作業進捗の早さのみを優先して決断したパターンです。開発スピードを優先するあまり、設計やコードの品質を犠牲にしてしまうケースです。
例としては、設計の段階での考慮不足や、コードのリファクタリングを怠ることが挙げられます。この場合、後々の開発効率やソフトウェアの信頼性に影響を与えるため、技術的負債が蓄積します。
開発速度のみを重視して品質が犠牲になっているため、短期間での開発とテストの反復により、品質を維持しながら段階的に製品を改善できるでしょう。
「慎重で無自覚」な技術的負債は、ベストアンサーで構築したはずが、後になって改修が必要となるパターンです。開発当初は最適と思われた設計や技術選択が、時間の経過や状況の変化により、後から見直す必要が出てくるケースです。
例えば、新たな技術の登場やビジネス要件の変更により、既存の設計やコードが適合しなくなります。この場合、技術的負債の回収は、新たな技術の習得や設計の見直しを伴うため、大きな労力を必要とします。
当初最適と思われた設計や技術選択が時間とともに見直されることが多いため、開発過程を詳細に記録することで、問題の原因分析や改修が迅速かつ効率的に行うことが大切です。
最後に、「無謀で無自覚」な技術的負債は、正しい知識を持たずして開発が進み、結果として回収が必要となるパターンです。技術的な誤解や知識不足により、不適切な設計やコードが生じるということです。
例えば、新たな技術を理解せずに導入したり、設計原則を無視したコーディングを行ったりすることが挙げられます。こうした場合、技術的負債の回収は、誤った知識の修正やスキルの向上を伴うため、時間と労力がかかります。
技術的負債は、時として必要悪となるためすべてがすべて悪いものであるとは断言できません。ただし、技術的負債によって現場に何らかの負担が強いられている、エンジニアに不満が募っている状態は看過してはならないものです。
技術的誤解や知識不足によって不適切な設計やコードが生じているため、単体テストを繰り返すことで各部分が正しく動作しているかを確認し、新たに発生したバグを早期に発見して修正しましょう。

ここから、技術的負債をわかりやすく解説した3つの事例を紹介します。
日本航空のGo Toクラウド
ラクスル株式会社のRaksul Platform Project
Yahoo!株式会社のディスプレイ広告
日本航空は、クラウドの徹底活用を通じて、将来起こりうる技術的負債を迎え撃つ戦略を展開しています。具体的には、既存システムの刷新を行い、クラウドへの移行を7~8割までを目指しました。結果、システムの運用コストを削減し、新たな技術的負債の発生を防げるでしょう。
また、日本航空は顧客管理や業務管理システムも見直し、このシステムもクラウドへと移行することで、業務の効率化も図っています。この取り組みは、技術的負債を未然に防ぐための有効な手段であり、他の企業にも参考になるでしょう。
なお、日本航空の事例は、「アジャイル開発を活用する」に該当すると考えられます。
クラウドへの移行を通じて、既存システムの刷新とシステム運用コストの削減を実現し、新たな技術的負債の発生を防ぐという戦略がアジャイル開発の原則に沿っています。クラウドへの移行により、システムが柔軟に対応可能となり、変化に応じた迅速な改善が可能です。
参考:日経XTECH:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02066/051300002/
次に、技術的負債を返済した事例として、ラクスル株式会社のRaksul Platform Projectを見てみましょう。ラクスルは、レガシーシステムと人に頼り切ったビジネスモデルによって発生した技術的負債を、既存の事業を細分化することで解消しました。
具体的には、システムの再設計を行い、業務プロセスを最適化することで、システムの運用効率を向上させました。また、海外への展開や事業の多角化に向けて、新たなシステムの開発も進めています。
このように、ラクスルは技術的負債を返済するために、事業の再構築を行うという大胆な取り組みを行いました。技術的負債が企業の成長を阻害するリスクを理解し、解消するための具体的なアクションと言えます。
総じて、ラクスル株式会社の事例は、「リファクタリングを定期的に行う」という対処法に近いでしょう。
レガシーシステムと古いビジネスモデルに起因する技術的負債を、システムの再設計と業務プロセスの最適化を通じて解消した点が、リファクタリングの核心です。
参考:ラクスル(はてなブログ):https://techblog.raksul.com/entry/2017/12/18/raksul-platform-project/
最後に、Yahoo!株式会社のディスプレイ広告の事例です。Yahoo!では、10年近く運用してきたディスプレイ広告の仕様が、プロダクトの成長フェーズや時代の変化に追いつかず、技術的負債を抱えていました。
しかし、Yahoo!は広告の描画方式を統一し、実装ロジックの一元化を行うことで、この技術的負債を解消しました。さらに、マイグレーションを行うことで、システムの無駄を一掃し、システムの運用効率を大幅に向上させています。
Yahoo!は技術的負債を解消するための具体的な行動をとり、その結果、システムの運用効率を大幅に向上させることができました。技術的負債を返済するための1つの方法と言えるでしょう。
なお、Yahoo!株式会社のディスプレイ広告の事例は、「テストを繰り返す」に該当すると考えられます。
長年にわたるディスプレイ広告の仕様が時代遅れとなっていた問題を、広告の描画方式を統一し実装ロジックを一元化することで解消しました。これにより、システムの無駄を削減し、効率を大幅に向上させたのです。この改善プロセスでは、継続的なテストと評価が行われたはずです。
参考:Yahoo!公式:https://techblog.yahoo.co.jp/entry/2022060130304125/

技術的負債は、ソフトウェア開発の過程で避けがたい現象です。しかし、その管理と対処は開発の効率と製品の品質を保つために不可欠です。
小規模からプロジェクトを開始し、段階的に品質を向上させるアジャイル開発の方法を取り入れる
コードの健全性を保つためにリファクタリングを定期的に行う
開発プロセスの透明性を高めるために記録を残す
単体テストや統合テストを繰り返し実施することで、新たなバグの早期発見と修正を行う
などの方法で、技術的負債は返済できます。技術的負債を理解し、適切に管理することは、開発チーム全体のストレスを軽減し、最終的な製品の品質を高めることにもつながるものです。ぜひ、この知識を活かして実際の開発現場での改善に努めましょう。
技術的負債について、解消方法や取り組みについて多くのワークショップや講演を行っている人物こそが、和田卓人氏、通称t_wadaです。
和田卓人氏は、プログラマーであり、テスト駆動開発の第一人者として知られています。彼の提唱するアジャイルな開発手法や、技術的負債を解消するための取り組みは、多くの開発者にとって参考になるものが多いでしょう。
はてなブログユーザーのmtx2s氏が書いたブログ記事では、技術的負債は返済するに限るという主張がされています。その理由として、技術的負債が積み重なることで、開発環境が悪化し、結果的にエンジニアの離職につながるという考えが挙げられています。
つまり、使い勝手の悪いサービスからは顧客が離れていくように、技術的負債によって働きにくい職場からはエンジニアが離れていってしまうというということですね。
このように、技術的負債は開発者だけでなく、組織全体にとっても大きな問題となり得る側面もあるものです。そのため、技術的負債の解消は、組織全体で取り組むべき課題と言えるでしょう。
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