はじめに：資料作成は「AIに任せる」時代へビジネスシーンにおいて、プレゼンテーション資料の作成は避けては通れない業務の一つです。しかし、情報収集から構成案の作成、スライドデザインまで、そのプロセスには多くの時間と労力が費やされます。もし、この一連の作業をAIが代行してくれたら、私たちはより創造的で本質的な業務に集中できるのではないでしょうか。近年、ChatGPTやGeminiといった大規模言語モデルの進化に伴い、様々な業務を自動化する生成AIツールが登場しています。その中でも特に注目を集めているのが、スライドやWebサイトの自動生成に特化したAIエージェントツールです。本記事では、弊社代表の岡田とエンジニアの秋月が、数あるツールの中から「Manus」を取り上げ、その具体的なスライド作成機能について、実際の対話形式で徹底解説します。Manusがどのように情報を収集し、スライドを構築していくのか、その驚くべきプロセスから、実用上のメリット、そして注意すべき課題までを深く掘り下げていきます。この記事を読めば、AIによる資料作成の最前線と、明日から使える実践的な活用法がわかります。AIエージェントツール「Manus」とは？岡田: Gensparkも多機能ですごいですが、今回はそれと似たコンセプトの「Manus」というツールについて話していきましょう。これもGensparkと同様に、AIエージェントがスライドなどを自動で作成してくれるツールです。秋月: はい。ManusもGensparkと同じく、単なるチャットボットではなく、特定の目的に特化したAIエージェント群と考えるのが分かりやすいですね。岡田: 特にManusが面白いのは、スライドやWebページの作成プロセスです。今回は、まずスライド作成機能を試してみたので、その流れを具体的に見ていきたいと思います。【実践】Manusでスライドを自動生成する具体的な手順岡田: 今回は、私が普段情報発信しているWebページの内容を元に、スライドを作成させる、という使い方を試してみました。記事コンテンツをスライド化して、YouTubeの解説動画に展開する、といった二次利用を想定したものです。ステップ1：スライド作成の指示出し岡田: まず、Manusの「作成」メニューから「スライド」を選択します。そして、プロンプト入力欄に「このWebページの内容を元にスライドを作って」という指示と、対象となるページのURLを入力しました。秋月: シンプルな指示ですね。ここからManusがどう動くかがポイントですね。ステップ2：AIによる情報収集とコンテンツの自動要約岡田: 指示を出すと、Manusが驚くべき動きを始めます。なんと、指定したWebページを自律的にブラウジングし始めたんです。ページをスクロールしながら、その内容をリアルタイムでマークダウン形式のメモにまとめていく様子が画面に表示されます。秋月: なるほど、人間がWebページを読んで要点をメモする作業を、AIが完全に自動で行っているわけですね。これはブラウザの自動操作技術とAIの要約能力を組み合わせた、まさにAIエージェントならではの挙動です。岡田: そうなんです。ページをどんどん下にスクロールしながら、情報を追記していく。このプロセスを見ているだけでも、技術的な面白さを感じました。ステップ3：スライド構成の自動生成岡田: ページ全体の情報を読み取り終えると、次はそのメモを元にスライド全体の構成案を作成し始めます。これもマークダウン形式で、「スライド1：タイトル」「スライド2：はじめに」といった形で、各スライドのタイトルと要点を書き出してくれるんです。秋月: Gensparkがアウトラインを生成するのと似たプロセスですね。まず骨子を固めてから、具体的な中身を作成していく。人間が資料を作る際のアプローチと同じで、非常に合理的です。ステップ4：画像の自動検索と挿入（※要注意）岡田: 構成案が固まった後、さらに面白い動きがありました。各スライドの内容に合った画像を、AIが自らWeb検索して探し始めたんです。秋月: ほう、画像まで自動で探してくれるのですか。それは便利そうですね。DALL-E 3やMidjourneyのような画像生成AIを使って、スライドの内容に合わせた画像を生成するのかと思いました。岡田: 私も最初はそう思ったんです。画像生成の参考にするために検索しているのかな、と。しかし、次の瞬間、ネットで拾ってきた画像をそのままスライドに挿入し始めたんです。秋月: （笑い）それは…非常にリスキーですね。著作権や肖像権を全く考慮していない動きです。岡田: ええ、非常によろしくない（笑）。正直、これはダメだろうと思いました。中国発のツールだからなのか、そのあたりの感覚が少し違うのかもしれません。これは実用する上で最大の注意点ですね。Manusスライド作成機能のメリットと課題対談を通じて見えてきた、Manusのスライド作成機能のメリットと、実用化に向けた課題を整理します。観点メリット課題（デメリット）スピードURLやテーマを渡すだけで、情報収集から構成案、スライドデザインまでを数分で完了できる。生成プロセスに時間がかかる場合がある。アイデア創出ゼロから構成を考える手間が省け、アイデアのたたき台として非常に有効。AIの提案に引きずられ、思考が画一的になる可能性がある。コンテンツ品質元となる情報源があれば、論理的な構成のスライドを作成できる。Web上の画像を無断で使用するため、著作権侵害のリスクが極めて高い。デザイン・互換性一定のテンプレートに沿ったデザインを自動で適用してくれる。PowerPointやGoogleスライド形式で書き出すと、大幅なレイアウト崩れが発生する。メリット：アイデアの壁打ちから構成案までを高速化岡田: 著作権の問題はさておき、スライド作成の初稿、たたき台としての価値は高いと感じました。特に、記事コンテンツをスライド化して二次利用する、といった用途には非常にマッチしそうです。秋月: まさにそうですね。ゼロから作るのではなく、すでにあるコンテンツを別のフォーマットに変換する作業は、AIが得意とするところです。構成案を作るまでの時間を大幅に短縮できるので、人間は内容のブラッシュアップやデザインの微調整といった、よりクリエイティブな部分に集中できます。課題1：著作権リスク岡田: しかし、やはり画像の無断使用は看過できません。生成されたスライドをそのまま使うことは、ビジネスシーンでは絶対に不可能です。利用する場合は、挿入された画像をすべて削除し、フリー素材や自身で作成した画像に差し替える作業が必須になります。秋月: この点はツールの改善を待つしかありませんね。将来的には、ストックフォトサービスと連携したり、画像生成AIを内部で呼び出す形にアップデートされることを期待したいです。課題2：レイアウトの崩れと手直しの必要性岡田: もう一つの大きな課題が、書き出し後のレイアウト崩れです。Manus上で見たプレビューは綺麗なのですが、PowerPoint（.pptx）やPDF形式でエクスポートすると、文字が枠をはみ出したり、オブジェクトが重なったりと、かなり崩れてしまうんです。秋月: おそらく、内部的にはHTMLベースでスライドをレンダリングしていて、各オフィスソフトの仕様との互換性が完全ではないのでしょう。岡田: そのため、結局は書き出した後に自分で一つ一つのスライドを確認し、手直しする必要がありました。この修正作業にどれだけ時間がかかるかによっては、トータルで見ると必ずしも時短になっていない可能性もあります。秋月: とはいえ、構成とテキストがほぼ出来上がっている状態なので、ゼロから作るよりは速いかもしれません。どの程度の修正で済むかは、ケースバイケースでしょうね。まとめ：現状のAIツールとどう向き合うべきか今回は、AIエージェントツール「Manus」によるスライド作成機能について、その具体的なプロセスと実用性を探りました。岡田: Manusは、Webページの内容を自動で読み解き、構成案からスライドまでを生成してくれる、非常に野心的なツールだと感じました。特に、「記事コンテンツのスライド化」といった二次利用の初稿作成においては、大きな可能性を秘めています。秋月:一方で、著作権を無視した画像収集や、書き出し時のレイアウト崩れなど、実用化にはまだ多くの課題が残されているのも事実です。これらのAIツールは、あくまで「優秀なアシスタント」であり、最終的な品質担保や意思決定は人間の役割であると再認識させられます。岡田: そうですね。AIが生成したものを鵜呑みにするのではなく、その内容を精査し、リスクを管理しながら活用する「AIリテラシー」が不可欠です。AIの提案をたたき台として利用し、メリット・デメリットをリストアップさせ、最終的な判断は人間が下す。現状では、そういった付き合い方が最も賢明と言えるでしょう。このようなツールを使いこなし、本当に業務を効率化するためには、ツールの特性を深く理解し、適切なプロンプトで指示を出す専門的なノウハウが求められます。その業務課題、AIで解決できるかもしれません「AIエージェントで定型業務を効率化したい」「社内に眠る膨大なデータをビジネスに活かしたい」このような課題をお持ちではありませんか？私たちは、お客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、本記事でご紹介したような最新のAI技術を活用して、ビジネスを加速させるための最適なご提案をいたします。AI戦略の策定から、具体的なシステム開発・導入、運用サポートまで、一気通貫でお任せください。「何から始めれば良いかわからない」という段階でも全く問題ありません。 まずは貴社の状況を、お気軽にお聞かせください。＞＞ AI開発・コンサルティングの無料相談はこちらFAQQ1: ManusとはどのようなAIツールですか？A1: Manusは、ユーザーの指示に基づき、AIエージェントが自律的にタスクを実行する生成AIツールです。本記事で紹介したスライド作成のほか、Webサイトの自動生成などの機能があります。特定のURLやテーマを与えるだけで、情報収集、要約、コンテンツ生成までを自動で行う点が特徴です。Q2: Manusで作成したスライドはそのまま商用利用できますか？A2: 現状では推奨できません。 本文で解説した通り、Manusはインターネット上から画像を無断で検索・挿入する機能があります。これは著作権侵害に当たる可能性が非常に高いため、生成されたスライドをそのまま商用利用することは極めて危険です。利用する場合は、必ずすべての画像を著作権フリーのものに差し替えるなど、法的なリスクを排除する作業が必要です。Q3: AIによるスライド作成の最大のメリットは何ですか？A3: 資料作成の「初稿」を圧倒的なスピードで作成できる点です。情報収集や構成案の作成といった、最も時間のかかる工程をAIに任せることで、人間はより創造的な作業や最終的なブラッシュアップに集中できます。アイデアのたたき台として活用することで、生産性を大幅に向上させるポテンシャルがあります。ツール名・サイトリンク注釈Manus: 本記事で解説したAIエージェントツール。https://manus.im/GenSpark: Manusと同様のコンセプトを持つAIエージェントプラットフォーム。PowerPoint: Microsoft社が提供するプレゼンテーションソフトウェア。Googleスライド: Google社が提供するクラウドベースのプレゼンテーションソフトウェア。