OCRを導入したのに工数が変わらない理由──「一気通貫で自動化しないと意味ない」と断言できる根拠
最終更新日:
2026.3.18

監修者情報

岡田 徹
NOVEL株式会社 代表取締役
大阪大学在学中よりエンジニアとして活動し、複数のプロダクト立ち上げを経験。
2019年2月にNOVEL株式会社を設立。
2022年より生成AI領域に特化し、
AIライティングSaaS『SAKUBUN』(累計70万回利用・2万アカウント)を企画・開発。大手メディアや人材企業・出版企業への導入実績を持つ。
現在は中堅企業向けAIコンサルティングに注力し、製造業・小売業・金融機関など業種を問わず、生成AIの導入から定着までを一気通貫で支援している。
著書: 『2冊目に学ぶ ChatGPTプロンプト攻略術』(C&R研究所、2024年)
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OCRを導入して読み取りはできるのに、その後のExcel貼り付けや確認作業は人のまま。「一気通貫で自動化しないと全体工数は変わらない」という構造的な理由と、例外処理・辞書の育て方・ROIの出し方を解説します。
「読み取り部分だけ自動化」では全体の工数はほぼ変わらない。一気通貫で自動化しないと意味がない
一気通貫を阻む最大の壁は「基幹システムに連携する口がない」「Excelがないと業務が回らない」という現実である
例外処理を後回しにするとチェック工数が減らず、導入前とほぼ変わらない状態になる
辞書は「人が直したものを自動で登録させる」仕組みにすると、使えば使うほど精度が上がっていく
OCRを導入して「読み取りはできるようになった」状態で止まっている会社が多くあります。具体的には、OCRが出力したCSVをExcelに人の手で貼り付けて、そこからさらに人がレポートを作る、というフローです。
この状態だと、業務フロー全体を自動化しないとあんまり効率化につながりません。読み取る部分だけが簡略化されても、後続を人がやり続けている限り、全体の工数はほぼ変わらないからです。その業務がある以上、結局誰かがやり続けているという構造は何も変わっていません。
3人でやっている業務であれば、多少改善されても実感しにくい。100人のオペレーターが入力業務をしているような規模であれば50人にできる可能性がありますが、少人数では「OCRを入れて変わった」という感覚になりにくいのはこのためです。
一気通貫で効率化しないとあんま意味ない、というのはその通りなのですが、一気通貫のハードルには2つの現実的な障壁があります。
壁①:基幹システムに連携する口がない
OCRで読み取ったデータを基幹システムに自動で流し込もうとしても、基幹システム側にAPIなどの連携口がないと、結局最後は人が手入力しないといけない状況になります。「つないで終わり」にならず、最後の手入力が残り続けます。
壁②:ExcelやローカルPCが業務フローに組み込まれている
今の業務がExcelがないと回らない、という状況や、Excelが複雑に連携したフローになっていてそのExcel自体は取っ替えられない、という現場も多いです。こうなると自動化に時間がかかりますし、結果として微妙な状態になることもあります。
一方で、量があってコストが相当かかっているなら、基幹システムにAPIを開発するコストすら許容できる場合もある。つまり業務にやる価値があるかどうかの判断が大事で、量が多くて人の時給が高い業務ほどROIが出やすいということです。

一気通貫のフローを組んだとしても、例外処理を後回しにすると別の問題が起きます。チェックする手間が減らないので、あんまり効率化されたような感じにならない、という状態です。
例外率は最初10〜20%あるのが普通です。時間を計測してみると50%ぐらいは削減できているかもしれないけれど、その業務がある以上、誰かがやり続けなければならないので「変わった気がしない」という感覚になりがちです。
ただし例外の中には、AIで吸収できるものが多くあります。表記揺れについては、"(株)"か"株式会社"かみたいな揺れはAIで一義に変換できます。半角カタカナを全角に置き換える、取引先名を正規化するといった処理もすぐできます。「例外だから人が確認する」ではなく、「この例外はAIで処理させる」という発想の転換で、確認件数を減らしていくことができます。
商品名と商品コードの照合のような処理では、辞書が必要になります。ここで多い失敗が「辞書を一度作って終わり」にしてしまうことです。
現実的な辞書の育て方として有効なのは、人が間違いを直したときに、その商品名と商品コードを紐付けて辞書に勝手に登録させる仕組みにすることです。次からはその辞書が生かされるので、最初人が頑張っていた努力が報われる、だんだん性能が良くなる、という状態になっていきます。
更新を手作業に任せていると、新製品・新型番が増えるたびに辞書が古くなっていきます。自動更新の仕組みと、基幹システムからの定期的な同期の両方を組み合わせるのが現実的です。
全社の帳票処理を一気に自動化しようとすると、壁が多くて動けなくなります。今一番時間がかかっている帳票処理フロー1本を選んで始めるのが正解です。
スタートのハードルという意味では、既存のSaaSなら月5万円程度で使えるケースがあります。一旦入れてみるかという感じで使われているケースも実際に多い。本格的なカスタム開発の前に、まずSaaSで1本試して「自動化が業務にはまるか」を確かめるアプローチは現実的です。
ただし月5万円で「読み取り部分だけ」を自動化して止まるのでは、冒頭で述べた「工数が変わらない」状態になります。1本のフローでも、読み取りから後続処理まで一気通貫で設計することが重要です。
これまでの内容を3点に整理します。
第一に、読み取り部分だけを自動化しても全体の工数はほぼ変わりません。後続の確認・入力・照合まで含めて一気通貫で設計するかどうかが、「変わった」か「変わらなかった」を分けます。
第二に、一気通貫を阻む最大の壁は基幹システムへの連携口がないことと、Excelが業務フローに深く組み込まれていることです。量と単価が大きい業務ほど、この壁を越えるコストをかける価値があります。
第三に、辞書は「人が直したら自動で登録される」仕組みにすると使うほど精度が上がります。例外の表記揺れはAIで吸収できるものも多く、「例外だから人が確認する」ではなく「この例外はAIで処理させる」という設計が確認件数の削減につながります。
A: 「今、誰かが毎日1番時間をかけている紙・帳票の処理」を一つ書き出してみてください。そこに同じフォーマットの書類が繰り返し届いているなら、自動化の効果が出やすいです。逆に月に数回しかこない書類や、届くたびにフォーマットが大きく違う書類は最初の対象には向きません。
A: まず処理量とコストを試算してみてください。量が多くて担当者の時給が高い業務なら、APIを開発するコストが回収できる計算になる場合があります。そうでない場合は、CSV出力とセットのSaaSを月5万円程度で使いながら、人の手を最小化する設計から始めるのが現実的です。
A: 「人が修正したものを自動で辞書に登録する」仕組みにしておけば、担当者が意識して更新作業をする必要はありません。修正するという日常業務の中で辞書が育っていく状態になります。負担になるのは「手動で辞書を更新しなければならない」設計の時なので、最初にここを自動化しておくかどうかが運用の分かれ目です。
A: まずSaaSで1本試して「自動化が業務にはまるか」を確かめる順序が現実的です。ただしSaaSでも後続フローを一気通貫で設計しないと読み取り部分だけ自動化した状態になり、工数が変わらないまま月額だけかかり続けます。がっつりやるなら、OCR以外の後続フローの設計が重要です。
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