システム基礎知識

フルスクラッチ開発とは?既製品・一部開発・全体開発を選ぶ条件

最終更新日:

2026.10.5

フルスクラッチ開発とは?既製品・一部開発・全体開発を選ぶ条件

フルスクラッチ開発を検討するときは、既製品で業務を行えるか、足りない処理だけ作れるかを先に確かめます。不足しているのが粗利表の集計だけなら、販売管理まで作り直さずに、集計の部分だけを作る方法があります。

社内で選定理由を説明するには、製品の機能表に加えて、自社のデータと業務手順の確認が必要です。選択肢は3つあり、自社がどこまで作る必要があるかで比べます。

選択肢使う機能・作る処理判断に必要な確認
既製品で対応する標準機能や設定を使う必須要件を満たし、業務手順も合わせられるか
既製品を残して一部を開発する既存機能を使い、不足する集計や連携を作る必要なデータを取り出し、業務に間に合う頻度で連携できるか
仕組み全体を開発する対象業務の機能やデータ管理を設計する部分開発で足りない理由と、継続投資の価値を説明できるか

この記事では、既製品・一部開発・全体開発のどれを選ぶかの判断方法を説明します。

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フルスクラッチ開発を選ぶ前に、既製品で足りる条件を確かめる

既製品を選ぶ基準は、自社の必須要件を満たし、実際のデータで必要な結果を得られることです。

何を確認できれば、開発せずに既製品を使えると判断しますか。

岡田自社でやりたいことを要件として一覧にし、必須要件と希望要件に分けます。そのうえで、SaaSが必要なことを満たせるかを確認します。実際のCSVやExcelを入れて試すことも必要です。

既製品で対応できるかは、必須要件の切り分け・自社実データでの試用・業務手順の変更可否の順で確かめる
図1|既製品で足りる条件を確かめる3つの手順

必須要件と希望要件を分け、製品の対応範囲を比べる

まず、業務上欠かせない要件と、あると便利な要件を分けて書き出してください。たとえば集計業務なら、集計単位や計算方法、結果を確認する時期まで書くと、製品の対応範囲と比べられます。

比較表には、標準機能で対応できるか、設定変更が必要か、未確認かを記録してください。希望要件が未対応という理由だけで開発を選ぶと、作る範囲が必要以上に広がります。

自社のCSVやExcelを入れて試す

機能名が一致していても、自社のデータで想定した集計結果を得られるかは、CSVやExcelの実データを試用環境に入れて確かめるのが確実です。

たとえば粗利表を作りたい場合は、現在使っている元データと、いま手作業で作っている粗利表を用意します。試用時の出力と比較し、計算結果に差がある箇所や、手作業が残る箇所を記録してください。

既製品に合わせて業務を変えられるか確認する

岡田販売管理や顧客管理などの管理システムは、既製品に業務を合わせる方がよいと考えます。ただし、規模が大きい会社や、業務がすでに確立されていて変えにくい会社では、システムを業務に合わせざるを得ない場合があります。

業務を変えられるかは会社ごとに異なるため、変更が必要な手順を業務担当者と確認してください。試用で残った手作業も、導入後に続けられるかの判断材料です。

既製品を残し、必要な部分だけフルスクラッチ開発する条件

必要なデータを既製品から取り出せるなら、不足する集計や連携だけを作る選択肢があります。接続方法に加え、データの内容と更新のタイミングを確認します。

既製品からデータを取り出せれば不足する集計だけを開発でき、手動出力しかできない場合は連携が止まったときの対応まで決める
図2|データの取り出し方で分かれる部分開発の進め方

データを取り出せるなら、不足する集計や連携を作る

既製品を残して外側だけ作る方法は、どのような条件なら選べますか。

岡田パッケージにCSVやファイル交換、API、定期メール、バッチ処理などの連携方法があるなら、データを取り出し、粗利表の集計部分だけを独自に開発できます。ECのデータを分析用データベースへ入れて可視化する構成も一例です。

デジタル庁の『APIテクニカルガイドブック』には、取得項目や利用制限、エラー対応、稼働監視の設計上の注意が整理されています。政府のAPI向けの資料を参考に、既製品の公式仕様と照合する項目をまとめました。参照:APIテクニカルガイドブック・第2〜4章|デジタル庁、2024年改定

確認項目確かめる内容
データ項目計算に使う金額や日付、データを照合するための番号を取得できるか
更新頻度必要な時刻までにデータが更新され、集計を終えられるか
取り出し制限出力件数、APIの呼び出し回数、取得権限に制約があるか
手動作業ファイルの出力や受け渡しを誰が行うか
失敗時の対応失敗を検知できるか、未処理分を再実行できるか、復旧を誰に依頼するか

個々の製品で対応できるかは、公式仕様と試用で確かめてください。

手動出力やRPAが必要なら、連携が止まった場合の対応も確認する

岡田CSVを手動でしか出力できない場合は、手作業かRPAで対応します。RPAは失敗し、データを連携できないこともあります。

日次集計なら、担当者が何時に出力し、集計結果をいつ確認するかまで決めておきましょう。RPAで自動化する場合も、失敗時に手動で出力できるか、集計の締め切りに間に合うかを確認してください。接続できるかと、業務で使い続けられるかは、別々に確かめてください。

仕組み全体のフルスクラッチ開発を検討する条件と負担

全体開発を検討するときは、既製品と部分開発で満たせない要件を具体化します。そのうえで、得られる価値が開発後の保守・改修を含む投資に見合うかを判断します。

独自の業務要件とデータ統合の価値を確かめる

岡田仕組み全体を作り直す判断は、実務ではまれです。経営陣がデータ統合を重視し、長期の投資を続ける意思があるかが判断材料になります。工数削減に加えて、経営判断の高速化、ミスの削減、信用の維持といった価値まで見込めるかを確認します。

工数以外の価値は、自社で何が変わるかを具体的に書き出して評価してください。求人サイトのように、大枠が共通でも必要な機能の細部が案件ごとに異なる場合もあります。既製品への追加開発で対応できるかを確かめたうえで、全体開発の必要性を判断してください。

開発後の保守と機能改修を費用に含める

全体開発の費用は、開発対象・移行・接続・監視・障害対応・機能改修の範囲をそろえて比較する
図3|見積もりで範囲をそろえる6項目

費用は、開発対象・移行・連携・保守の範囲をそろえて比べてください。IPAの『超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条』も、移行や周辺システムとの接続費用を含め、依頼する作業を明確にするよう説明しています。参照:超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条・原理原則6|IPA、2006年

見積もりでは、作る機能と処理に加え、移すデータの対象、接続先と接続方法を確認します。公開後のサーバー監視、障害の原因調査、復旧対応、機能改修をどこまで含めるかも、比較の条件に入れてください。

岡田システムは開発後も改良を続けます。想定と違う動作が見つかった場合、仕様か不具合かによって追加費用の扱いを協議することもあります。

保守の対象作業と、機能変更を別途見積もる条件を開発先と確認してください。

フルスクラッチ開発の判断前に、業務と要件を整理する

現在の業務と、導入後に変える業務を具体化すると、既製品で満たせる要件と追加開発が必要な処理を比べられます。

岡田システム開発では、フィット&ギャップ分析に加え、現在の業務フローを洗い出すAs-Isの整理と、導入後の業務を設計するTo-Beの策定が大切です。

As-Isで現在の作業者と手順を書き出し、To-Beで変更する手順と自動処理にする範囲を決める
図4|As-IsとTo-Beで整理する業務の記録項目

現在の業務と導入後の業務を具体化する

現在の業務を整理するAs-Isでは、誰がどの手順で作業しているかを書き出します。導入後の業務を決めるTo-Beでは、システム導入によって変更する手順を具体化します。

粗利表の集計なら、元データの出力者、集計方法、結果の確認者、修正が必要な場合の手順まで記録してください。導入後も人が確認する作業と、自動処理にする範囲も、ここで決めてください。

フィット&ギャップ分析では、決めた業務手順と製品の機能を比較し、合う部分と不足する部分を確かめます。試用の結果も使い、標準機能で対応する範囲と、作る必要がある処理を切り分けてください。

開発中に追加要件が増える原因を減らす

岡田業務手順が曖昧なまま着手すると、開発中に追加要件が出て、開発と要件定義を同時に進める状態になります。その結果、期間が延び、費用が膨らむことがあります。

たとえば集計を作り始めてから例外的な計算方法が分かると、処理の追加や確認が必要です。着手前に業務担当者から通常時と例外時の手順を聞き、未確認の要件を一覧に記録しておきます。

業務整理で減らせるのは、確認不足による追加要件です。新たな要望が出た場合には、期間と費用への影響を確認して、今回の開発に含めるかを決めてください。

まとめ|フルスクラッチ開発が必要な範囲を決め、次の検討へ進む

社内で選定理由を説明するときは、必須要件、実データで試した結果、残す機能と作る処理を一枚に整理してください。判断できていない連携条件や保守の範囲も記載が必要です。

開発する範囲が決まったら、社内で開発・保守できるか、外部へ依頼するかを検討します。既製品を選ぶ場合も、業務手順の変更と導入後の担当者を決める必要があります。

自社の業務をどの方法で改善するか迷っている方は、現在の課題をNOVELへお聞かせください。既製品の活用を含め、必要な対応範囲を一緒に整理します。

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取材回答/監修
岡田 徹NOVEL株式会社 代表取締役

エンジニア出身。大阪大学在学中から複数のプロダクトを立ち上げ、2019年にNOVEL株式会社を設立。上場企業を含む60件以上のAI導入・システム開発を支援し、見積もりと要件定義は自ら担当する。著書『2冊目に学ぶ ChatGPTプロンプト攻略術』(C&R研究所、2024年)。

公開 2026.10.5|最終更新 2026.10.5

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