システム基礎知識

市民開発で修正に失敗し、手戻りが続くときの原因と対処法

最終更新日:

2026.10.30

市民開発で修正に失敗し、手戻りが続くときの原因と対処法

「社員がAIで作った業務ツールに機能を足したら、想定と違う画面や処理になりました。直そうとしても、どこまで変えてよいか分かりません。」 開発まではすぐできても、現場で使い続けられない。そうした状況の方に向けた記事です。

市民開発の失敗で起きる改修の手戻りは、どうすれば減らせるのか。この記事で扱うのは、原因ごとの確認手順です。

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市民開発失敗の原因3つと確かめたいこと

秋月何でもかんでも機能を入れようとするところに、手戻りの兆候が出ます。複数人が違う方向から指示して全部を解決しようとすると、同じ機能がまったく違うものになってしまいます。

確かめること考えられる原因
同じ機能について、担当者ごとの指示や画面の説明が食い違っていないか?原因A:理想の完成形が人によって違う
変更内容にテーブルの削除やデータ構造の変更があるが、影響も説明できているか?原因B:データへの影響を確かめずに変更した
同時操作や変更後のテストの記録はあるか?原因C:同時操作のテストが足りない

テストは本番と分けた環境で、架空のデータを使って行ってください。

たとえばMicrosoftはPower Platformの市民開発向け資料で、IT管理者と環境やアクセス権を検討する手順を示しています。共有コンポーネントを含むアプリなどでは、開発・テスト・リリース用の環境を分ける構成を勧めています。 参照:シナリオ1:市民開発|Microsoft Learn

原因A:理想の完成形が人によって違う

機能の選定から修正指示の書き直しまでの4工程
図1|機能を決め直してからAIへ指示するまでの4工程

確認すること

同じ機能を作っている人に、その機能で何ができれば完成かを説明してもらいます。画面にある入力欄やボタンが、説明どおりに動くかも確かめます。

秋月機能が増えて複雑になりすぎているなら、機能を減らすことが大事です。AIに伝える前に「この機能はこういうもの」と1つに絞ってから開発するのがよいと考えています。 画面が間違っていると、その仕様のまま裏側も作ることになります。まず表側を仕上げ、機能が決まってから裏側を合わせるのが、いちばん合わせやすいです。

解決する4つの手順

  1. 手戻りが起きている機能を1つ選び、担当者ごとの指示を並べる
  2. 選んだ機能で行う作業を1文にする。記入例:「利用者が備品を選び、貸出を確定する」
  3. 作っているアプリの画面に、その作業に要る入力欄とボタンがそろっているか確かめる。今回作らない機能も書き出す
  4. 画面の見た目とボタンを押した後の動きについて担当者間で説明をそろえ、AIへの修正指示を書き直す

この手順で決めるのは、機能の範囲です。画面が合った後も、保存するデータと同時操作の確認は残ります。

原因B:データへの影響を確かめずに変更した

ソースコードとデータで、変更時の影響・戻し方・引き継ぎ物が違うことの比較
図2|ソースコードとデータの扱いの違い

確認する3つのテーブル

貸出画面が開いていても、変更前の貸出記録が残っているとは限りません。変更案にテーブルの削除やデータ構造の変更があれば、保存済みの記録をどう扱うか確かめてください。

秋月備品貸出台帳なら、重要なのは次の3つのテーブルです。

  • ユーザー
  • 備品の一覧
  • 誰に貸したか

この3つが崩れなければ、どんな変更でも今の作り方で対応できます。例外は、テーブルを消すときやデータの構造そのものを見直すときです。ツールは動いても、データが消えることがあります。

テーブルは、データを種類ごとに保存する表です。テーブルの数や分け方は、実装によって変わります。

解決する4つの手順

  1. 変更するテーブルと保存している情報を、開発担当者と書き出す。利用者のどの操作で読み書きするかも書く
  2. 変更前の記録が変更後にどう残るかを開発担当者と確かめる。説明できない削除や構造変更は、反映前にエンジニアへ見せる
  3. データ保存先のバックアップ対象と、復元できる時点を確かめる。ソースコードの戻し方とは分けて扱う
  4. 引き継ぐ担当者が、設計書と実装を見てデータの意味を説明できるか確かめる

秋月データの構造と、どんなときにどう使われているかが分かれば、最低限は引き継げたと判断します。コードを読むだけでは分からない、テーブルの意味まで分かれば、なおよいです。コードだけでは戻せないのがデータなので、慎重に扱う必要があります。

Power Platformのバックアップと復元には、環境の種類や対象による制約があります。Microsoftは大きな変更の前に手動バックアップを作成するよう案内していますが、手動バックアップに対応しない環境もあります。 参照:環境のバックアップと復元|Microsoft Learn

Power Platform以外の製品や自作アプリでは、使っているデータ保存先の手順で確かめてください。バックアップがあるだけで、必要なデータを復元できるとは限りません。

外注した部分を含むツールでは、引き継ぎ物の所在も確認します。

岡田引き継ぎ物として受け取るのは、次の3つです。

  • ソースコード一式
  • 設計書
  • 各アカウントのログイン情報

ドキュメントが実装と合っていない場合や、担当者にしか知見がない場合は、取り決めていても引き継ぎが難しくなることがあります。ただ、基本はコードを解析できるので、あまり起きないと考えています。

外注先から受け取る引き継ぎ物と、契約前に取り決める権利は、以下の記事で説明しています。

原因C:同時操作のテストが足りない

確認すること

1人が1回使えた記録に加えて、複数人が重ねて操作したときの結果を確認します。試す前に、正しい結果を決めてください。

秋月同じ備品を2人が同時に借りる場面を先に確かめます。ただ、この問題は根が深くチェックもしにくいので、人が手で確かめることはあまりないと思います。 動くかどうかの確認は自動テスト、使いやすさの判断は人が実際に操作する、という分担がいいでしょう。どちらか一方だけでは足りない場面もあると思います。

解決する4つの手順

  1. 業務担当者が、操作と期待する結果をセットで書く
  2. 同時操作を再現する方法をエンジニアと決める。人がほぼ同時にクリックした1回だけでは、問題なしと言えない
  3. 自動テストの結果を確かめた後、業務担当者が貸出から返却まで実際に操作する
  4. 仕様を変えたら、影響する範囲を再テストする

次の表は、備品を1点ずつ管理する台帳のテスト設計例です。

操作の例期待結果の例
2人が同じ備品を同時に借りようとする貸出が成立するのは1人分で、もう1人には貸出できなかったことが分かる
貸出の確定ボタンを続けて押す同じ貸出が重複して記録されない
保存中に通信が切れ、その後もう一度開く保存の成否を確認でき、再操作で同じ貸出が重複しない

MicrosoftはDynamics 365向けのテスト資料でも、テスト対象を業務の要件に結び付け、結果や不具合を記録する進め方を示しています。機能の正しさに加え、性能や使いやすさも確認対象です。 参照:Test your Dynamics 365 solution before deployment|Microsoft Learn

秋月仕様が変わったときは、基本は全項目を確かめ直します。データベースの層など、ソフトウェア全体に関わる変更なら全部です。機能の変更なら、変わる範囲の大きさによって、その機能の周辺をどこまで見るかが変わります。

市民開発の失敗を解決したかの3つの確認方法

原因A〜Cそれぞれについて、解決を確認する状態の一覧
図3|原因別の解決の確認方法

最初に書き出した機能の操作をテスト環境でやり直し、期待していた動作と実際の動作を比べます。確認結果には、試したバージョンと操作条件を残してください。

  1. 原因Aの確認:担当者間で決めた入力欄とボタンが画面にあり、合意した動作になっている
  2. 原因Bの確認:変更前の記録を表示でき、必要な値や記録同士の対応が保たれている。備品貸出台帳なら、誰がどの備品を借りているかを変更前の記録と比べる。担当者がデータの意味を説明できる
  3. 原因Cの確認:決めたテストの期待結果を満たし、業務担当者が実際の作業を終えられる

市民開発失敗の原因が上記3点以外だったとき

使う人が10〜20人の場合と1,000〜2,000人の場合で、必要な対応が違うことの比較
図4|利用規模による性能確認の違い

利用人数やデータ量が増えた後だけ遅くなるなら、性能を疑ってください。

秋月使う人が10〜20人なら問題なくても、1,000〜2,000人になると、バックエンドの強化などが必要になる可能性があります。画面だけでは判断できない非機能要件なので、要件を定義して実際に確かめる必要があります。 数百人〜数千人が使うような要件の大きいものや、扱うデータ量が多いものは、専門家に任せないと難しいです。指摘を見てどう直せばよいか分からない場合も、エンジニアと一緒に作るべきだと考えています。

性能は、実際の処理とデータ量に合わせて確かめてください。性能や復旧の確認項目は、MicrosoftのDynamics 365向けテスト資料の非機能要件も参考になります。

エンジニアに相談するときは、問題が起きる操作・期待結果・直前の変更内容を渡してください。

秋月レビューで見るのは、例えば次のような点です。

  • セキュリティ上の問題
  • 構造上のおかしさ
  • 修正内容に対してコードの変更量が多すぎないか

指摘はGitHubのプルリクエストやIssueで伝えます。確認する観点をスキルなどの形で文書化し、後でAIにチェックさせるべきだと考えています。

要件の大きいシステムについて、既製品で足りる条件と作る範囲の決め方は、以下の記事で説明しています。

まとめ|次に直す機能を1つ選ぶ

手戻りが起きている機能を1つ選び、期待する動作を担当者間でそろえてください。データを消す可能性のある変更の影響が分からない場合や、同時操作を確かめる方法が分からない場合は、変更前の状態を保ったままエンジニアに相談します。

社内ツールの開発相談

どこまで直してよいか分からないままでもご相談ください

初回MTG:いまのツールと業務を伺い、作る範囲を一緒に分けます。
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業務ツール内製化支援

御社専用の業務ツールを、設計・開発・運用まで内製化する支援です。要件定義・設計とテスト・セキュリティ・運用の4つを教えます。成果物は、御社専用の業務ツールと、AI駆動開発を身につけた社員です。

[業務ツール内製化支援について相談する](/contact)

取材回答/監修
秋月 宏介NOVEL株式会社 リードエンジニア

飲食業界の人材サービス「フーズラボ」、上場企業が発行する地域情報紙のLINE配信システム、累計70万回利用のAIライティングツール「SAKUBUN」を開発。バックエンドや業務の自動化を担当した案件の発注企業のうち2社が、のちに上場している。自宅では約200万円をかけてサーバーを自作し、自前で運用する。ChatGPTの解説書『2冊目に学ぶ ChatGPTプロンプト攻略術』を共著。

編集
NOVEL編集部NOVEL株式会社

社内のエンジニアや代表への取材と、お客様の導入支援の記録をもとに記事を作っています。NOVELは上場企業を含む60社以上のAI導入・システム開発を支援し、商談解析AI「DOKO」などの自社製品も開発しています。

公開 2026.10.30|最終更新 2026.10.30

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この記事の監修者
秋月 宏介
NOVEL株式会社 リードエンジニア

飲食業界の人材サービス「フーズラボ」、上場企業が発行する地域情報紙のLINE配信システム、累計70万回利用のAIライティングツール「SAKUBUN」を開発。バックエンドや業務の自動化を担当した案件の発注企業のうち2社が、のちに上場している。自宅では約200万円をかけてサーバーを自作し、自前で運用する。ChatGPTの解説書『2冊目に学ぶ ChatGPTプロンプト攻略術』を共著。

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生成AI・AIエージェント・業務システム導入・開発伴走支援|AI導入の支援実績 60社以上/上場企業から中堅企業まで|2019年設立