データ分析

需要予測AIは自社のデータで始められる?導入前の確認と進め方

最終更新日:

2026.10.14

需要予測AIは自社のデータで始められる?導入前の確認と進め方

需要予測AIの導入を検討するときは、発注担当者と予測したい商品・何日先の需要を知りたいかを確かめます。そのうえで、手元の販売実績を使えるか調べ、過去の実績で予測を試す順序で進めます。

拠点ごとのExcelをまとめる担当者や、発注業務へのAI導入を進める担当者向けの記事です。弊社が開発を受ける立場から、需要予測AIの導入を相談する前の準備と進め方をまとめました。

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需要予測AIを導入する前の4つの確認

社内で整理することは、次の4点です。発注担当者と一緒に確かめてください。

確認すること決める内容・調べる記録
予測の対象どの商品について、何日先の需要を、品目別・拠点別のどの単位で出すか
実績データの状態販売実績の期間と集計単位、商品コードの違い、欠品・特売の記録の有無
精度の確かめ方過去のどの期間を使い、何日先の予測と実績を比べるか
発注時の確認在庫と入荷予定、賞味期限、最低ロットなど、人が判断する条件

最初に予測を試す商品は、どのように選びますか。

岡田最初は実績が多い売れ筋の定番商品から始めます。何日先を予測するか、品目ごとか拠点ごとか、数字を出す単位も先に決めておきたいです。

需要予測AIに使う実績データの条件

商品コードをそろえ、販売実績に欠品や特売の記録を添えます。必要な実績の長さは商品によって変わるため、年数だけで導入の可否を決めないでください。

季節商品は日別3〜5年を目安にする

季節商品・定番・新商品・販売回数の少ない商品ごとに、必要な実績と進め方を並べた表
図1|商品の種類別に見た、必要な実績と予測の進め方

季節で売れ方が変わる商品は、何年分の実績が必要ですか。

岡田季節性がある商品では、日別で3〜5年分を目安に考えています。1〜2年では厳しそうなので、もう少しデータが欲しいです。月の合計しかない場合も、予測に何のデータが影響するかによりますが、集計の単位が粗いと感じます。

予測の専門書『Forecasting: Principles and Practice』は、必要なデータ量は予測モデルで推定する項目の数やデータのばらつきに左右されると説明しています。一律の最低件数を当てはめる方法には根拠が乏しいとしています。 参照:13.7 Very long and very short time series|OTexts

短い期間の実績や月次データで始められるかは、対象商品と予測したい期間を伝えて個別に確かめます。

欠品・特売の記録を販売実績に添える

岡田欠品した日が分からないと、予測が低く出ると考えています。特売の日は売れ方が違うので、値引きを含めて記録を先に集めたいです。欠品や特売があった日は、日別の表に印の列を足して残します。

日々の在庫数や入荷日、入荷までにかかる日数も欲しいです。ただ、日別の実績が3年分あれば、欠品・特売の記録がない状態でまず予測を試し、精度を見て記録を足す進め方もあります。

新商品と販売回数の少ない商品を分ける

岡田新商品は、似た商品の実績を使う形で予測を受けられます。一方、年に数回しか売れない商品は、予測には向かないと考えています。

データがそろっていても、品目が少なく担当者の判断で業務を進められている会社や、発注のやり方が決まっていない会社には、導入を勧めません。

需要予測AIのために実績を整える

必要な数字を決め、手元のデータから商品コードの対応を整理します。複数の表をまとめた後は、元の記録と照合してから発注担当者に渡します。

見たい数字から商品コードをそろえる

拠点ごとに商品コードが違うExcelを、コードをそろえた1つの表にまとめる前後の比較
図2|データ整備の前と後

実績が短く、拠点ごとに商品コードも違う場合は、何から始めますか。

岡田最初に決めるのは、見たい数字です。次に、手元にどんなデータがあるかを調べ、商品コードなどのマスタをどう作るか決めます。その後の整備は並行して進めます。

拠点ごとに同じ商品のコードが違う場合、コードをそろえることが予測を始める条件です。基幹システムを途中で入れ替えていても、数え方やデータの形が同じなら、変更前後の実績をつなげて使えます。

発注担当者へ渡す前の3つの照合

岡田拠点ごとの実績を1つの表にまとめた後は、次の点を確かめます。

  • 月の合計が基幹システムの売上と合っているか
  • 欠品や特売の日に印が付いているか
  • 商品コードの対応に漏れがないか

3つがそろったら、過去2〜3か月分を出して、今のレポートと同じ数字になるかを見ます。同じ数字になれば、予測を試し始めてよいと思います。

帳簿と実際の在庫のずれは、予測の検証と並行して直してよいと思います。ただし、どちらの在庫を正とするかは先に決めておきたいです。

弊社にはデータ整備だけでも依頼できる

予測を頼む前に、拠点ごとのExcelを1つの表にそろえる作業だけでも依頼できますか。

岡田データ整備だけの依頼も受けられます。お手伝いできるのは、商品コードをそろえるところからです。需要予測そのものも受けますが、何を予測したいかによって対応する範囲が変わります。

需要予測AIの精度を過去の実績で確かめる

自社の商品と予測したい期間を決め、過去の実績で答え合わせをします。他社の的中率を比べる際も、対象と計算方法が同じかを確かめてください。

予測する条件をそろえて比べる

過去の起点から2週間先を予測し、起点を変えて誤差を確かめる手順
図3|過去の実績で精度を確かめる手順

他社の的中率を、自社でも期待してよいですか。

岡田品目や何日先か、精度の数え方が違えば比べられません。売れ筋の商品だけなら近づく可能性はありますが、品目によります。導入前に、過去の実績を使って予測し、答え合わせするのが基本です。

『Forecasting: Principles and Practice』では、予測する時点より前のデータだけを使って検証します。実務で数期間先の予測が必要なら、数期間先の誤差を調べる方法も示しています。 参照:5.10 Time series cross-validation|OTexts

たとえば2週間先の発注を決めたいなら、過去のある日を起点に、当日までの実績で2週間先を予測します。答え合わせに使う期間の実績を学習に混ぜず、起点を変えて誤差を確かめる方法です。

本番では参考値から使い始める

岡田AIは一度でうまくいくとは考えていません。精度の調整が必要です。精度を約束できませんが、予測が外れたときの見直しまで受けます。本番では参考程度に使い始め、調整を続けながら使う範囲を広げていく方がよいと考えています。

今年から大口の取引先が増えた場合に、過去の検証と同じ精度を期待できるかは、その取引先の規模にもよります。

需要予測AIを発注に使う前の確認

予測が出たら、人が根拠となった実績と現在の在庫、入荷予定を確かめます。新商品や特売など、担当者の判断を残す範囲も決めておきます。

定番と新商品・特売で人の関与を変える

岡田定番はAI、新商品と特売は人が判断する分け方がよいと思います。人が判断しないと分からないことは、人に任せます。販売実績が少ない商品や季節性のある商品では、担当者の直感の方が合うことも多いと考えています。

賞味期限・最低ロット・納期を確かめる

賞味期限・最低ロット・納期の3つの発注条件ごとに、発注担当者が確かめる点を示した表
図4|予測値をそのまま発注しない3つの発注条件

岡田予測の数字が合っていても、そのまま発注しない方がよい商品はあります。賞味期限が短く廃棄が出る商品や、最低ロット・納期に決まりがある商品です。

Microsoftの公式資料では、発注条件として最低数量や発注単位、調達にかかる日数を設定します。需要の予測値に加えて、発注条件を発注計画で扱います。 参照:Default order settings for dimensions and product variants|Microsoft Learn

Microsoftの有効期限を扱う計画では、既存在庫を期限内に使うことも考慮します。商品を使える日・入荷する日と有効期限によって、需要に充てられる在庫が変わります。 参照:Master planning for products with limited shelf life|Microsoft Learn

予測が300個でも、最低ロットが1,000個なら、発注数量をそのまま300個にはできません。必要数を上回る分を期限内に販売できるか、必要な日に入荷するかを発注担当者が確認します。AIを導入する前に、賞味期限・最低ロット・納期を管理している表や契約内容も集めておきましょう。

まとめ|予測したい商品と手元の記録を持ち寄る

まずは発注担当者と、試したい定番商品、何日先の需要を知りたいか、数字を出す単位を決めてください。データを集める担当者は、販売実績の年数、拠点間の商品コードの違い、欠品・特売の記録の有無を調べます。

弊社への相談時は、予測したい内容と手元の記録を持ち寄ってください。商品コードの統一など、データ整備からご相談いただけます。

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取材回答/監修
岡田 徹NOVEL株式会社 代表取締役

エンジニア出身。大阪大学在学中から複数のプロダクトを立ち上げ、2019年にNOVEL株式会社を設立。上場企業を含む60件以上のAI導入・システム開発を支援し、見積もりと要件定義は自ら担当する。著書『2冊目に学ぶ ChatGPTプロンプト攻略術』(C&R研究所、2024年)。

公開 2026.10.14|最終更新 2026.10.14

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生成AI・AIエージェント・業務システムの開発と導入支援|AI導入の支援実績 60社以上/上場企業から中堅企業まで|2019年設立